ご相談者  男性・60代後半

コロナ禍で収入が激減!もう売るしかない!?

リーマンショック後、景気が悪化して、住宅ローンが払えなくなって困ったというご相談をよく受けました。最近はコロナの影響で、同じようなお悩みが増えています。

今回ご相談に見えたのは、コロナ禍で、去年から仕事が三分の一になってしまったという60代後半の自営業者の方です。「住宅ローンが払えなくなったから、自宅を売却したい」ということでした。

住宅ローンを組んで家を購入した場合、毎月の支払いがきびしくなると、「どうしよう、どうしよう」と、皆さん本当に不安を感じてしまうんです。「家に住めなくなるかもしれない」と思うと、落ち込んだり、正常な判断ができなくなる方もいらっしゃいます。

そこで「なんとか返済しよう」と思って生活費を切り詰めたりするのですが、それではだんだん追いつかなくなります。その結果、返済がだんだん遅れ始めると、今度は銀行から督促状が来るようになります。そうなるとさらに不安は増して、私どものところへいらっしゃる頃には、精神的に追い詰められたような状態になっている場合も多いのです。

でも今は、国の政策で、「コロナの影響による住宅ローンの返済に関する相談があったら、積極的に応じるように」という通達が各金融機関へ届いているようなんです。ですから実は、「家を売却する」というだけでなく、「一時的に条件変更をする」という、別の選択肢もあるんです。

例えば今まで10万円払っていたとして、「金利だけ払う」という条件へ変更すれば、月々の支払いが2万5000円になります。原則1年ですが、とりあえず一時しのぎにはなりますよね。

ただ一般の方は、こういう方法があること自体を知らないので、今回のご相談者も開口一番、「いくらで売れますかね?」とおっしゃいました。まあ、この方のお気持ちのなかには、お子さん達も大人になって家を出ていて、ご夫婦2人に今の家はちょっと広すぎるから、もう手放してもいいかな、という思いも少しはあるようでした。

でもね、家を手放すということは、今度は新しく家賃が発生するということです。結局月々7~8万かかるとしたら、良い解決策とは言えません。ですので、「今後リタイアされた後に、ずっと家賃を払いつづけるのは大変ですよ」ということをお話しして、考え直してもらうようにしました。

そもそもこの方の場合、かなりローン返済は済まされていて、残りは数百万円という状態。できれば払い切った方が良いと思われました。

条件変更のために、銀行へ同行

結局、ご自宅を売却するのはやめて、一時的に条件変更を申請することに方針は定まったのですが、それにはいろいろと手続きが必要になるため、ご相談者に同行して、私も銀行へ行きました。

まずは、「ローンの支払いが何ヶ月遅れていて、延滞金がいくら付いていて、結局どうなっているのか」ということをはっきりさせることが重要です。ご本人は頭が混乱したり、気持ちが萎えていたりするため、現状認識が事実と違っているというケースも多いんです。それによって、条件変更が認められる場合と、もっと傷が深すぎて認められない場合と、2通りに分かれます。

今回の方はまだ渦中にありますが、銀行と相談するにしても、言い方ひとつで結果が違ってきたりするので、なるべく慣れた方に付き添ってもらう方が安心でしょう。

これは別のケースですが、「ボーナス時にたくさん返済する」というローンを組んでいた方が、ボーナスが出なくなったために返済が滞り、「もう家を売却するしかない」と思っていたところ、毎月払いに条件変更するだけで一気に解決した、ということもありました。「こんな方法があったんですね!」と大変喜ばれましたが、「銀行へ相談にいく」ということを最初から知っていれば、思い詰める必要はなかったのです。

もちろん中には、家を売却して残債を払っても、まだお金が残る場合、小さい家へと住み替えていただいたこともありますよ。ですのでケースバイケースなんですが、ローンが払えないからといって、「売却する」という選択肢以外にも方法があるということを知っておかれると良いと思います。