土地の価格相場の種類 解説 決めるのは?
公示価格(公示地価) 都市計画区域(自治体が都市計画法に基づいて指定した地域)内の標準的な土地(標準地)を、2人以上の不動産鑑定士が鑑定して評価を決定 国土交通省
時価(実勢価格) 市場で売買された価格を示すのが時価(実勢価格)。時価は、その取引が行われた時点での価格なので、市場の需要や景気の動向が変われば変動する場合あり 市場
相続税評価額(路線価) 路線価とは、道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額 国税庁
固定資産税評価額 固定資産税など税額を計算する際に用いられる基準価格 各自治体
基準地価 全国の約2万地点の「基準地」を1人以上の不動産鑑定士が評価して公表される土地の標準価格 各都道府県

この記事では、土地の価格の種類と価格(相場)の決まり方を解説します。

土地価格の種類

公示価格(公示地価)

公示価格とは、国土交通省が発表している土地の価格です。

一般の方が土地取引や資産評価をするにあたり、価格の客観的な目安として活用されているもので、毎年1月1日時点における全国のある特定地点の1平方メートルあたりの単価となります。全国のある特定地点は25000地点以上あります。

建物の敷地の場合はその建物がないものとして、また、土地を使用するうえで制限などのある場合は、それがないものとした更地での価格となり、毎年3月下旬頃に発表されています。

時価(実勢価格)

時価(実勢価格)とは、土地を売買する際に、実際に取引が成立する価格(もしくは取引した価格)のことです。その土地の特徴や当事者間の合意によって成り立つ価格です。実勢価格は適正価格より高くなることも低くなることもあります。

例をあげると、適正価格が2,000万円の土地があったとします。売主が売り急いでいれば実勢価格は1,000万円になることもありますし、周辺環境などが良くて買い手が殺到すれば実勢価格は3,000万円になる可能性もあります。

実勢価格はさまざまな要因によって変動するため、実際に取引終了した価格が実勢価格となります。

相続税評価額(路線価)

不動産の査定を行ったり、相続税・贈与税等にかかる税金を計算する際にその税額を決める計算基準になります。路線価とは、その名の通り路線(道路)に付けられた価格です。

これには相続税用と固定資産税用の2種類の路線価あります。一般的には相続税用のことを言います。

この路線価は見方を変えると、税務署用の土地価格です。日本中の道路の1平方メートルの評価を毎年1月1日時点で行い、その年の7月1日に発表します。

土地に接した道路の路線価を所有の土地の平米数にかければ、その地の路線価を計算できます。

路線価は実際の売買価格の60~80%といわれています。

60%と80%ではかなりの違いが出てきます。

路線価で売却価格が決まってしまうことはありません。

むしろ路線価と実際の販売価格の差が大きい方土地が価値の高い土地といえます。

固定資産税評価額

固定資産税を課税するために市町村が評価する固定資産の価格です。

固定資産とは家や土地のことです。

所得税や住民税と違い、固定資産そのものに課税されるため、所有者本人の支払い能力に関係なく課税額が決められます。

固定資産の価格は「適正な時価」であり、通常取引で成立する価格であるとされています。

通常は公表されている「時価公示価格(標準価格)」の約70%が固定資産税評価額になります。

基準地価

都道府県が毎年9月に公表するその年の7月1日時点における全国の基準地の土地価格を公示する指標です。

この公表された土地価格を「基準地価」といいます。

一般の土地取引だけでなく、地方公共団体や民間企業の土地取引の目安として活用されます。

基準地価は、正式には「基準値標準価格」といい、基準地価の他に「都道府県調査地価」とも呼ばれます。国土交通省は「都道府県地価調査は、地価公示とあわせて一般の土地取引の指標ともなっている」としています。

公示地価と手順や評価方法、内容などがよく似ています。

公示地価と基準地価の違い

最も大きな違いは、調査時期です。公示地価は1月1日時点、基準地価は7月1日時点の価格であるため、基準地価はしばしば公示地価を補完するものとして活用されます。特定地域の地価の動向を把握するときに有効です。

多くの場合で標準地と基準地が異なるため、結果として基準地価が公示区域外の土地を評価しているケースもあります。

そのため、公示区域外の土地の地価を知りたい場合に、基準地価が利用されることが多いです。

地価の評価基準も少し異なります。公示地価は、地価公示法に基づいて2名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたもの。一方、基準地価は、国土計画利用法に基づいて1名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたものです。

鑑定者の数が多いから公示地価の方が信頼できるというわけではありませんが、両者を比較する際には評価基準の違いを考慮する必要があります。

土地価格の決まり方

公示価格(公示地価)

公示価格は公示地価とも言います。

「公示地価」は、2人以上の不動産鑑定士が鑑定しそれぞれの鑑定結果を加味した上で決定され、毎年1月1日の評価が、3月中旬頃に公表されます。

基本的に対象は都市計画区域内となっていますが、都市計画区域以外でも不動産の取引が行われると予想される土地に関しては鑑定が行われます。

時価(実勢価格)

実勢価格とは、土地の不動産売買の時に実際に取引された価格のことです。販売開始時点の売り出し価格ではなく、実際に取引が終了した時点での価格のことです。

例えば、このような例で考えてみましょう。

Aさんが売りたい土地の路線価から価格目安を出したところ2,000万円でした。
もう少し高値で売りたいAさんは、販売価格2,300万円で売り出しました。
結局なかなか買い手が見つからず、1,900万円で売却しました。

この場合の実勢価格は、1,900万円となります。

実勢価格には決まった価格はなく、当事者間で話し合いの結果で決まります。

路線価や公示地価をもとに実勢価格を参考にすることはできますが、あくまで参考値でしかないことに注意しましょう。

なぜならば、実際に土地を売買する時には、土地の形や売買条件など、当事者同士のさまざまな事情によって、相場と離れた価格で決まることが多いからです。

買い手がなかなか見つからなければ実勢価格は評価額よりも下がりますし、反対に需要があれば実勢価格は上がります。

相続税評価額(路線価)

路線価(相続税評価額)を決めるのは国税庁です。実際の評価にあたっては公示価格を参考にします。まず公示価格があり、その数値をもとに路線価が決まるということです。

不動産鑑定士が現場で公示価格を算定します。路線価の決定は国税庁が行いますが、算出には間接的に不動産鑑定士が関与していることになります。

路線価は、毎年1月1日時点を評価時点として、毎年7月1日に国税庁のホームページで公開されます。

固定資産税評価額

固定資産税は家と土地の2つに課税されるもので、それぞれ個別に評価されます。

家屋の評価

家屋にかかる固定資産税は、「再建築価格方式」によって計算されます。

再建築価格方式では、「まったく同じ建物を再建築したときにかかる金額」を計算し、算出された金額に築年数分の減額補正をして評価額を決める仕組みです。

築年数分の減額率を「経年減点補正率」と言い、基本的に戸建もマンションも計算の仕組みは同じです。

固定資産税評価額は、建築費用のおよそ70%と考えていいでしょう。

再建築価格方式では物価変動の割合に応じて工事原価で計算するため、実際の建築時にはタイムセール的に安く建築していても、評価額を計算するときには適正価格になるので注意が必要です。

建物の評価

建物は古くなるにつれて「経年減点補正率」によって固定資産税評価額が下がりますが、金額が0円になることはありません。

最終残存率という下限が決められており、最低でも2割は残り続けることになります。

つまり、実際に住めないような状態になっていても、最低限の税金はかかり続けるということです。

誰も住んでいない古くなった家でも課税され続けます。

詳細な評価は複雑

固定資産税評価額は市町村が決定します。

算出方法は全国で統一するため、総務大臣が定める固定資産評価基準を採用しています。

家屋では屋根や内壁・外壁・設備ごとに点数をつけ、基本的に1点当たり1円として計算します。

1点あたりの価格は1円が基本ですが、物価水準や設計管理などによる補正がされることがあります。

例えば、屋根の場合、瓦やスレートといった屋根の素材、屋根の角度によって点数が変化します。

基本的に面積の大きい内装や外装、屋根などが高額になりやすい傾向があります。

基準地価

基準地価は、1974年に定められた国土利用計画法施行令第9条に基づいて、不動産鑑定士の評価をもとに決定されます。

土地価格公示地価との大きな違いは、国土交通省ではなく都道府県が決めていることです。建物の価値などに左右されないよう土地を更地として評価します。

基準地価の区分は、「住宅地」「商業地」に加え、工場や物流施設などが立地する「工業地」、住宅地として使われる予定の「宅地見込み地」などがあります。全国で2万地点以上が設定されています。

公示地価は、基本的に都市計画区域内を調査対象としているのに対して、基準地価は都市計画の区域外も含まれます。調査時点の違いから、基準地価はその年半ばの地価動向がわかる指標となっています。

地価に影響する3つの要因

ここでは、実際に土地を売りたいとなった場合に、売り出し価格に影響を与える3つの要因をお伝えします。

地価も「需要と供給のバランス」によって価格は上下します。しかし、一般的な消費財とは異なり、100%需要と供給のバランスによる影響を受けるとはいえません。

一般的な消費財(量産品)の場合は、同じものをたくさん製造することで生産性を上げることができます。しかし、土地は同じものはありません。

そのため、土地そのものの人気が高くなると、価格もそれに比例して上がります。

土地の価格に影響を与える3つの査定ポイント

地価を左右する“土地査定”。主な査定ポイントには、以下の3つが挙げられます。

ポイント1:土地の特性

利便性が高いか、形は整っているか、高低差はないかなど、土地そのものの特性を査定します。一般的に、駅から近い、形がきれい、広い道路に面しているなどの特性を持つ土地は価値が高くなります。

ポイント2:流通しているかどうか

人の出入りが少なく、土地の売却がほとんど行われていないような地域では、明確な相場が算出されないことが多いため高い値段で取引されることがあります。

一方、流通量が多く、取引事例が多い場合は、明確な相場を算出することができる可能性が高いです。その場合は、一般的な価格で取引が行われます。

ポイント3:売主の事情

土地価格は、売主の事情によって変わることもあります。

例えば、売主が「できるだけ早く売りたい」という意向を持っていると、価格を安くしてでも売却に出したいと考えるでしょう。

一方、「できるだけ相場以上の値段で売りたい」と考えている売主であれば、希望する価格で買取ってくれる買主が現れるのを待つ可能性が高いといえます。

まとめ

土地の価格は、他の一般消費財と異なり、さまざまな価格がついています。

これが土地の価格がわかりにくい原因になっています。

目的によって、どの価格を使うかが変わってきます。

税金計算をする場合と、実際に売りたい場合には参考にする指標が変わります。

ご自身で最低限の知識を持ちながら、専門家に相談するのが間違いのない方法です。

そのためにも、普段から、信頼できる専門家(税理士や不動産業者など)を見つけておくことが大切ですね。