親や祖父母から受け継いだ家や土地は、必ずしも好きなタイミングで処分できるとは限りません。売りたくても売れず、持っているだけで所有者のお金を吸い上げる状態となった不動産は「負動産」とも呼ばれ、大きな社会問題となっています。
こちらでは、負動産となりやすい物件や、負動産を手にしてしまった時の対処法について解説します。
目次
売るに売れない「負動産」が生まれる理由
処分したくても処分できなくなってしまった負動産も、かつては高く評価され、高額で取引される資産として扱われてきたはずです。
なぜそのような不動産が、負動産と変化してしまうのでしょうか?
空き家の増加=経済力低下=資産価値下落
土地の取引価格である地価は、“どれだけ需要があるか”によって決められています。「交通の便がよい」「近くに大きな商業施設がある」「閑静な住宅地として人気が高い」など、人が集まりやすい土地ほど高い地価が設定されます。
しかし現在、日本国内では人口が減少し始め、地方の過疎化が加速的に進行しており、国内全体で空き家が急増しています。

(出典:平成30年住宅・土地統計調査)
総務省が公表した「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、空き家率は統計を始めた1958年以降右肩上がりを続けており、2018年には、空き家が住宅総数の13.6%を占めるまで増加しています。
同じく総務省が公表した「住民基本台帳人口移動報告(令和元年)」によれば、住民の転入が超過し、人口が増加している地方自治体は全体の26.2%と、多くの地方自治体の人口は減少傾向となっています。

(出典:令和元年住民基本台帳人口移動報告)
ここ数年、東京圏、名古屋圏、大阪圏の三大都市圏のうち、転入超過となっているのは東京圏だけ。首都への一極集中の傾向が、地方の過疎化に要因となっていることがわかります。
地方から人が居なくなることにより、それだけ地方の経済力は低下します。その結果、地方では、地価および不動産の価値が大きく下落していってしまうのです。
持っているだけで費用がかかる金食い虫
不動産は、資産でありながらも、所持しているだけでは多くの出費を生む“金食い虫”のようなものです。税評価額に対して発生する固定資産税に加え、マンション等の場合には、管理費や修繕積立金も支払い続けなければなりません。
親から実家の家屋や土地を相続したものの、子は別の地域で家を構えていることが多く、相続不動産は空き家として放置されることがほとんどです。相続した子からすれば、使いもしない不動産に対して、継続的に費用を支払い続けなければならないのです。
また放置されている家屋は、事件や事故の温床となってしまう恐れもあるため、空き家の放置は決していい状況とはいえません。
負動産となった空き家に国も対策を開始
年々増加する空き家に対し、国は2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、対策に乗り出しました。
この法律は「空き家法」と呼ばれ、管理が適切に行われていないと判断される空き家に対し、自治体による調査を実施。“管理不行き届き”と判断された場合には、「特定空き家」に指定し、権利上の所有者に管理の実施または状況の改善を促せるようにするものです。
特定空き家に指定された家屋に対し、所有者が適切な対応を取らない場合、住宅用地の固定資産税が最大6分の1にまで減額される「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外。負動産をさらなる金食い虫にしないためには、適切な管理が求められるわけです。
負動産になりやすい物件
買い手がつかず、売ることもできない負動産となってしまう物件には、次のような“傾向”があります。
リゾートマンションや別荘
かつて、バブルの時代に誕生した数々のリゾートマンションや別荘。素晴らしい環境の中で一時の休息を味わえる贅沢な物件でしたが、今では建物の老朽化も進み、資産価値が大きく下落しています。
当時は、都心のマンションと同程度の高額で取引されていたリゾート地の物件も、ブームが去った今では、タダ同然の価格ですら取引が成立しない状況となっています。
過疎が進む郊外の住宅
前述の通り、日本の人口は東京圏に集中する傾向が強まっており、郊外の地域の人口は減少しています。それに比例して、地方の経済力は低下しており、地価の下落も止まりません。
安くなった地方の土地を購入したとしても、周囲に人が居なければコミュニティの形成は困難です。一方、商売を始めたとしても購入してくれる客が少ないため、十分な収益を上げることも難しいでしょう。
過疎化が進む地方では、居住用、商業用いずれの用途でも不動産需要は低く、人口減少や少子高齢化がますます進むと見られる今後、価値が上がることにも期待できません。
共有者が多い不動産
相続などによって取得した不動産の共有者が多く、分割や売却、活用に苦労している方もいらっしゃるのではないでしょうか?
共有者がいる不動産は、1人の一存で、売却や解体、活用などすることはできません。権利者同士による話し合いを繰り返す間にも、税金などの維持費はかかり続け、建物の老朽化は進みます。昨今、共有者同士の話し合いに進展が見られず、放置された物件が負動産化しまうケースは激増しています。
負動産を手放す方法
「負動産」の所有者は、少しでも早く手放すことを考えるべきでしょう。
しかし価値のある不動産とは違い、負動産の需要は著しく低く、手放すことは容易ではありません。
方法1.売却する
もっとも手っ取り早い処分方法は、売却です。とはいえ、一般消費者の需要に期待できないからこその負動産。売却できる可能性があるとすれば、不動産業者による買取です。
一般的に、不動産会社は売主と買主とを仲介してくれるものですが、自らが買主になってくれることがあります。しかし、必ず買い取ってくれるという保証はなく、タダ同然の買取価格になってしまうことも覚悟しておきましょう。
なお、「住宅」としての価値は無い負動産も、「土地」としては一定の評価を受ける場合もあります。その場合には、ある程度の出費を覚悟して家屋を解体し、更地にすることも一つの売却方法です。ただし、更地にすることで「住宅用地の特例」の適用外となるため、固定資産税が最大6倍になる恐れがあります。解体して売り出す場合には、不動産会社の判断を仰ぎ、更地として所有する期間が最短になるよう配慮しましょう。
方法2.寄付・譲渡する
とにかく負動産を手放したいのなら、個人や法人、自治体などに寄付や譲渡することも考えてみましょう。
個人への寄付を行う場合には、受け取る側が贈与を受けたと判断されるため贈与税が課税されます。贈与税は年間110万円の基礎控除が受けられるため、不動産の評価額が110万円以下なら税金はかかりません。一方、法人へ寄付を行う場合には、寄付された側の贈与税だけでなく、寄付した側には所得税が課税される場合があります。
とはいえ、どんな人や法人でも、寄付や譲渡を受け入れてくれるわけではありません。譲渡を受け入れてくれる可能性がもっとも高いのは、隣地の住人でしょう。隣地の方からすれば、譲渡によって自分の敷地が広げられるため、「悪い話ではない」と受け入れてくれることが多いものです。
方法3.空き家バンクに登録
現在、各自治体が空き家対策として積極的に取り組んでいるのが「空き家バンク」です。空き家となってしまった所有物件を手放したい人と、その地域の物件を安く入手したい人を結びつけるサービスとして注目されています。
地方移住に興味がある人が実際に踏み切れない理由の一つに、移住先の物件探しが難しいということがあげられます。空き家バンクは、地方自治体が運営母体となっており、買い手が安心して利用してくれることがメリットです。とはいえ、空き家バンクを利用したからといってすぐに買い手がつくとは限らず、高く売れる期待ができるというものでもありません。過度に期待せず、負動産を処分するための1つの方法として位置付けておきましょう。
自治体によっては、空き家の解体や改修工事に対する補助金制度を設けていることもあります。空き家バンクを含め、自治体の制度を確認するため、負動産がある自治体のホームページなどを覗いてみるといいでしょう。
方法4.相続放棄
相続する不動産が「負動産」となってしまう恐れがあるならば、最初から相続しないという方法もあります。
相続できる資産の中には、現金や価値の高い不動産のみならず、負動産になりそうな物件や借金なども含まれることがあります。相続は、「全てを相続する」あるいは「全てを相続しない=相続放棄」の二者択一。特定の価値のある資産だけを選んで相続することはできず、相続した資産がある場合には、負債や負動産も相続しなければなりません。
また相続放棄をしたとしても、新たな相続人がその物件の管理を始めるまでは管理義務が残るため、完全に手放せない場合がある点には注意が必要です。なお、全ての法廷相続人が相続放棄した場合、相続資産は最終的には国庫に帰属されます。その手続きは個人で行うことは難しいため、司法書士へ依頼するとよいでしょう。
まとめ
人口減少、過疎化、少子高齢化、空き家問題などにより、今後さらに負動産は手放しづらくなることが予想されます。
・他社に売却を断られてしまった
・何か月も売れない…
・共有者同士の話し合いが進まない
どんなご状況にある方も、岡山市内の不動産のことならアーキ不動産にご相談ください。この地で長年営業してきた経験と、総合不動産事業者という専門性の高さをもって、ご所有者様にとって最適な対処方法をご提案させていただきます。