不動産会社は、基本的に、売主と買主を“仲介”するための機関です。しかし、不動産会社自らが物件を買い取ることがあります。つまり、買主が不動産会社になるということです。
不動産会社による買取には、「すぐ売れる」という大きなメリットがありますが、「価格が安くなる」というデメリットもあります。そしてスピードや価格のみならず、その他にも“仲介”による売却と違う特徴があるため、向いているケースと不向きのケースがあることを認識しておくようにしましょう。
目次
不動産の買取とは業者が再販するための“仕入れ”
まずは、「不動産会社自らが買い取る理由」から解説します。この理由を知っておくことで、買取のメリット・デメリットが認識しやすくなります。
不動産会社が物件を買い取る理由は、買い取った物件を再販して利益を得るため。買い取った物件をそのまま再販しても価値は向上せず、利益も大きくなりませんので、再販の前にはリフォーム・リノベーションが行われるのが一般的です。つまり、不動産会社による買取とは、再販のための“仕入れ”のようなものだということです。
不動産の買取と仲介を比較したときのメリット・デメリット
不動産会社が物件を買い取る目的を理解されたところで、ここからは、“仲介”と比較して、“買取”にはどんなメリット・デメリットがあるのか解説していきます。
買取のメリット
不動産会社による買取は、主に次の4つのメリットが考えられます。
1.すぐ売却できる
不動産会社による買取の一番のメリットは、すぐに売却できることでしょう。買取スピードは不動産会社や時期によって異なりますが、相談から物件引き渡し・決済まで最短1週間というケースもあります。
このメリットが活かされるのは、以下のような状況のときです。
・住み替えによる家の売却で新居を先に購入したためできる限り早く売りたい
・需要が低く、売却が長期化しそう(あるいは、すでに長期化している)
・離婚に伴う家の売却なので、すぐに売ってできるだけ早く離婚したい
・相続税などの納税が迫っていて早く資金化したい
不動産会社からすれば、物件の買取は“仕入れ”であるため、「利益が出る」と判断すれば、ビジネスライクにどんどんと話が進んでいきます。
スムーズな住み替え方法については、「スムーズに住み替えするための方法とは?ローン・諸費用・税金の疑問を一挙解決 」の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照だくさい。
2.内見等の過程を経なくていい
売却が早いだけでなく、内見や交渉といった過程を経ずに売却できることもメリットの1つだといえるでしょう。
不動産会社は、買い取った物件をリフォーム・リノベーション、あるいは解体・再築などして再販するため、物件の内部についてはこだわりません。価格についても、買取業者の査定額がそのまま買取価格になるため、“仲介”で起こりがちな値下げ交渉などもされず、速やかに買い取ってもらえます。
3.契約不適合責任が免責なことが多い
不動産売却の売主には、基本的に「契約不適合責任」が付帯します。
契約不適合責任とは、物件引き渡し後に契約内容に適合しない欠陥箇所等が発覚した場合、売主が修繕等しなければならない責任です。詳しくは、「契約不適合責任とは?不動産を売る人が必ず知っておくべき知識をわかりやすく解説」をご参照ください。
不動産会社による買取では、多くの場合、この契約不適合責任が免責となります。つまり、物件引き渡し後に、設備不良や欠陥部分が発覚したとしても、売主は責任を負わなくていいということです。
不動産会社は、買取後、物件をリノベーション・リフォーム、あるいは解体するため、内部の欠陥や汚れは問題としないケースが多いもの。壁紙の剥がれや床材のくぼみ、経年劣化部分などについても、基本的に、売主による修繕は不要です。
4.ローン解約の心配がない
一般の人が買主になるときに意外と多いのが、「ローン解約」です。ローン解約とは、“買主の住宅ローン本審査が通らなかった場合、この契約を白紙とする”というもの。「やっと契約が決まった!」と思っても、このローン解約によって、契約後、売却活動がまた振り出しに戻ってしまうことがあるのです。
物件を買い取る不動産会社は、住宅ローンを組んで購入することはありません。そのため、ローン解約の心配も一切ありません。
買取のデメリット
メリットを聞くと大変魅力的に思える買取ですが、デメリットについても認識しておかなければなりません。
1.買取金額が安い
不動産会社による買取の一番のデメリットは、“価格”にあります。
不動産が買い取る理由は、“再販して利益を得るため”でしたね。利益を得るためには、リフォームやリノベーションによって価値を向上させますが、それでも相場価格通りで仕入れては利益を出すのが難しいといえます。
そのため不動産会社が買い取る場合の金額は、相場から2~3割安い金額であることが一般的です。
2.どんな物件でも買い取ってくれるとは限らない
不動産会社は、どんな物件でも買い取るわけではありません。やはり、そこはビジネス。利益が出ると判断できない物件は、買取対象とはなりません。
また、全ての不動産会社が買取再販事業を行っているわけではないということも認識しておきましょう。
不動産の買取査定額は業者によって異なる
「相場価格の2~3割減」が買取価格の相場といえますが、どの不動産会社も一律この価格で買い取るわけではありません。また1社に「買取不可」と言われても、別の不動産会社であれば買い取ってくれる可能性もあります。
従って、不動産会社による買取を選択する場合にも、できる限り複数社の条件を比較した方がいいといえるでしょう。
まとめ
不動産会社による買取は、“早く売れるけれど価格に妥協しなくてはならない”売却方法です。この特徴や本文で解説したメリット・デメリットを踏まえると、次のようなケースが買取に向いているといえるでしょう。
・価格よりスピード重視
・長期間売れない
・売却活動を避けたい
ただし、“仲介”による売却でも、「スピード重視」「売れない物件の価値を向上させて売却を目指す」「非公開で売却する」ことは可能です。従って、初めから“買取”“仲介”と売り方を限定するのではなく、不動産会社と相談の上、少しでも好条件で売れる方法を追求するようにしましょう。