任意売却と競売について

家の売却方法のひとつに、「任意売却」があります。任意売却と言うからには、任意じゃない売却もあると言うことなんですが、それがいわゆる「競売」です。

住宅ローンを組んで家を購入したあとは、ローンを払っていくことになりますが、病気になったり、リストラにあったり、勤めていた会社が倒産するなど、予測不能なできごとにより、途中から払えなくなってしまう、ということが起きることもあります。

それで、毎月の支払いが滞るようになると、当然銀行から、支払いが催促されるようになります。だいたい半年ほど払えない状態が続くと、今度は月々払いではなく、全額一括で払ってくれという話になってしまいます。毎月のローンが払えないのに、一括で払えるわけないですよね。

そして銀行は、そういう時のために、「抵当権」といって、その土地建物を自由に売却できる権利を設定しているんです。ですので、銀行は持ち主の意志に関係なく、家を売却して、その売れた金額でローンの残りを回収することができます。これを競売と言います。

でもね、実は、競売って何十万もお金がかかるうえに時間もかかるから、もし別な方法でローンの残高を回収できるのであれば、銀行としても、できれば避けたいやり方なんです。

例えばローンの残りが2千万円あって、その家が2千万円以上で売れると思われる場合、銀行側は競売手続きをせずに、持ち主さんに「売却してください」とお願いしたりします。どんな事情であれ、家の持ち主が、その土地建物を売却するわけですから、傍目からは、普通の売却と同じになります。これが任意売却です。

競売を回避して、任意売却をする方法

ただ、家を購入して10年以内の場合、大概は、その家を売却した金額よりも、ローン残高の方が多いんです。2千万円のローン残高があっても、家が2千5百万円で売れるのであれば、売ったお金ですべて返済できますけれど、1千8百万円でしか売れなかったら、お金が足りません。

でもその場合、「2千万円のうち、1千8百万円払いますから、抵当権を抹消してください」と銀行に交渉して、任意売却に変更することは可能です。銀行としても、競売にするより、任意売却の方が、手間も手数料も省ける上に、早くお金が回収できるわけですから、申し出に応じてくれることもあります。

競売というのは、売主さんとの意思疎通ができない状態で売却するため、市場価格より値段が下がってしまいがちです。そうなると、いずれにしても銀行が回収できるお金は減ってしまうため、交渉に応じてくれるというわけです。

交渉が成立すれば、ローン返済はなくなりますが、足りない分の支払義務はもちろん残ります。それに関しては、少しずつ、可能な額だけ返していくことになります。

競売になると、不特定多数の人が見に来ます。裁判所から情報公開されますから、個人はもちろん、「安く買い取って高く売ろう」と思ってやってくる不動産会社も多いんです。つまり、いろいろな人が家の周りをうろつくことになり、それがご近所にも知られてしまいますから、なるべく避けたい事態ですよね。

つまり、ローン返済に困ってご自宅を売却する場合、可能であれば、競売よりも任意売却の方がはるかにメリットが多く、おすすめの方法となります。