家の住み替えでは、”現在の家の売却”と”新しい家の購入”のタイミングが、どうしてもずれてしまうことがあります。

タイミングがずれて一番困ってしまうのは、お金の面です。売却よりも購入がずっと先になってしまったら、資金繰りに困ってしまいますよね。こんなときに利用できるのが、「つなぎ融資」と呼ばれるものです。

ここでは、つなぎ融資のメリット・デメリット、うまく活用していくためのポイントなどを解説していきます。

つなぎ融資とは

1.つなぎ融資とは

つなぎ融資とは、家を住み替える際の、一時的な資金不足を補うために利用される融資のことです。

家の住み替えを行う際は、旧居を売却してその売却代金を新居の購入資金に充てる、といったケースが一般的ですが、中には旧居の売却よりも新居の購入が先行してしまうケースもあり、つなぎ融資はそのようなケースで利用されます。

なお、新しく家を建てる際の、一時的な資金不足を補うために利用される融資についても、つなぎ融資と呼ばれます。

※住宅ローンは家が完成してから実行されるのが一般的ですが、その前に土地代金や着工金などが必要となるケースが多く、そこで資金不足に陥ることがあるのです。

本記事では、家の住み替えにおけるつなぎ融資について解説していきます。

2.つなぎ融資の返済方法

つなぎ融資の融資期間は、一般的に半年から1年です。住宅ローンのように、何十年もかけて返済していくようなものではありません。

つなぎ融資の返済方法は、主に2つのパターンがあります。一つは、利息分のみを毎月返済していき、元金分を融資期限までに返済するタイプ、そしてもう一つは、利息分と元金分を融資期限までに一括で返済するタイプです。

返済資金は、旧居の売却代金が充当されるのが一般的です。仮に融資期間が半年で、旧居の売却代金で返済するとすれば、融資実行から半年以内に売却を完了させなければならないことになります。

3.つなぎ融資にかかる費用

つなぎ融資の金利は割高です。住宅ローンの金利相場が0.5%~1.5%であるのに対して、つなぎ融資の金利相場は2%~3%です。

さらに金利とは別に、10万円程度の事務手数料が発生するケースが多いです。

4.つなぎ融資の利用条件

つなぎ融資の利用には、不動産会社による買取保証が条件となるケースが多いです。

買取保証とは、通常の売却ができなかった場合に、相場の7割から8割の価格で買い取ってもらう仕組みのことです。

金融機関側は、買取保証を利用の条件とすることにより、未回収のリスクを軽減することができます。

つなぎ融資のメリット

つなぎ融資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

【メリット1:一時的な資金不足を解消できる】

家の住み替えを行う際、誰もが注意しなければならないのが、資金繰りについてです。

旧居を売却して、その売却代金を新居の購入資金に充てる、という方法をとることができればよいですが、それが難しいケースもあります。

たとえば、

◆売却の目途は立っていないが、どうしても欲しい物件が見つかり、他の方が購入する前に購入したい

◆売却の目途は立っていないが、引越し期限が迫っていて、すぐに新居を購入しなくてはならない

◆旧居売却の目途も新居購入の目途も立っているが、事務的な事情で売却手続きが遅れている

などなど。

こういった旧居売却よりも新居購入が先行してしまうケースでは、一時的な資金不足に陥ってしまいますね。

しかし、つなぎ融資を利用すれば、資金不足の問題を解消できます。もちろんリスクは伴いますが、家の住み替えをスムーズに行いやすくなります。

【メリット2:仮住まいが不要になる】

通常、家の住み替えでは仮住まいが必要となるケースが多いのですが、つなぎ融資を利用した場合は、仮住まいが不要となるケースがほとんどです。

なぜなら旧居の売却を待たずに新居を確保できるから、つまりは旧居と新居を同時期に所有できるようになるからです。わざわざ旧居から仮住まいに引っ越し、さらに仮住まいから新居に引っ越し、といったステップを踏むようなことはありません。

仮住まいを用意する必要がなければ、当然、仮住まい用の費用(敷金、礼金、仲介手数料、毎月の家賃など)がかかりません。引越し作業も、引越しに伴う住所変更などの手続きも、一回だけで済むことになります。

【メリット3:旧居の売却がしやすくなる】

繰り返しになりますが、つなぎ融資を利用すれば、旧居と新居を同時期に所有できるようになります。そのため、売却活動の際は、家に何もない状態で購入検討者さんに内覧をしてもらうことができます。

自分にとってみれば「自分の生活を見られるストレスがない」「内覧の度に掃除をする必要がない」というメリットが、購入検討者さんにとってみれば「遠慮することなく隅々までじっくりと内覧ができる」といったメリットがあります。

なお、一般的に、何もない状態で内覧をしてもらう方が、スピーディーかつ好条件で売却できるケースが多いです。売却後のトラブルやクレームなども圧倒的に少ないです。

つなぎ融資のデメリット

メリットがあればデメリットもあるものです。つなぎ融資にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

【デメリット1:金利が高い】

繰り返しになりますが、つなぎ融資の金利相場は2%~3%で、住宅ローンなどと比べて割高です。

一時的な融資とはいえ、住宅を買うわけですから融資金額は高額になり、それに伴って金利も高額になります。しっかりと返済できるよう、事前にシミュレーションをしておくようにしましょう。

【デメリット2:資金計画に狂いが生じてしまう可能性がある】

つなぎ融資は、通常、旧居の売却が確定する前に申し込むものです。

旧居の売却価格が思った以上に安くなってしまえば、資金計画が狂いが生じてしまうこともあります。

2,000万円での売却を想定して、1,800万円のつなぎ融資を組んだが、実際の売却価格は1,600万円であったーーたとえばこのようなケースです。

数百万円レベルで資金計画に狂いが生じてしまえば、

・引っ越し費用を用意できない

・新居で車を買うつもりだったがそれができない

・期限までにつなぎ融資の返済ができない

といった問題も起きてくるでしょう。

つなぎ融資に適しているケース

つなぎ融資にはリスクがあります。誰もが申し込めるようなものではありません。つなぎ融資に適しているケースについて、みていきましょう。

【ケース1:旧居が売れやすい物件】

期限までに旧居を売却できず、それによって返済資金を用意できないとなれば、損害遅延金が発生します。場合によっては、不動産会社さんによる買取が行われてしまうこともあります。

基本的には、旧居が売れやすい物件であることが望ましいです。売れやすい物件には次のような特徴があります。

売れやすい物件の特徴:

・駅近(目安は徒歩10分以内。徒歩10分以内を検索条件とするケースが多いため)

・築浅(目安は築10年以内。築10年以内を検索条件とするケースが多いため)

・ブランドエリア

・再開発エリア

・日当たりがよい

・スタンダードな間取り

【ケース2:資金力がある】

これは言うまでもないくらい当たり前のことではありますが、年収が高い、貯金がある、他にも不動産を持っているなど、資金力があると安心できます。

【ケース3:金銭的支援をしてくれる人がいる】

お金の貸借や資金繰りというものは、基本的に自分の責任で行っていくものですが、万が一のときに金銭的支援をしてくれる人がいると安心できます。

つなぎ融資を利用する上での留意点

つなぎ融資を実際に利用することになった際は、次の点に留意してください。

【留意点1:取り扱っている金融機関が少ない】

つなぎ融資は、住宅ローンなどのように一般的なものではありません。つなぎ融資を取り扱っている金融機関は一部です。

「この金融機関にお世話になりたい」と思っても、つなぎ融資を取り扱っていない可能性もあります。また、住宅ローンなどのように、各金融機関のサービスを比較して選ぶことは難しいです。

【留意点2:他のローンやクレジットカードの審査に通りにくくなる】

つなぎ融資を利用すると、他のローンの審査に通りにくくなってしまうことがあります。「新居に住み始めたら、自動車ローンを組んで車を購入する予定」などといった場合には注意してください。

また、つなぎ融資を利用すると、クレジットカードの申込審査やキャッシング審査に通りにくくなってしまうこともあります。家の住み替えでは、何かと出費がかさむものですが、クレジットカードがあてにできなくなるケースもあります。こちらにも注意してください。

つなぎ融資を利用する上でのコツ

つなぎ融資をトラブルなくスムーズに完済させるコツとして、次の3点があります。

【コツ1:実績のある不動産会社に依頼する】

一般的に、旧居の売却活動は、不動産会社さんに仲介を依頼することになります。

しかし、一口に不動産業者といっても、賃貸仲介、売買仲介、物件販売などなど、それぞれ得意とする分野があります。

また、売買仲介が得意といっても、「一戸建てでは十分な実績があるけれど、マンションではあまり実績がない」「あるエリアでは十分な実績があるけれど、別のあるエリアではあまり実績がない」といったケースもあります。

基本的に、旧居の売却活動は、対象エリアで類似物件の売却実績があるところに依頼するようにしましょう。

【コツ2:ニーズのあるタイミングで売却する】

住宅は、1月~3月に売却しやすくなる傾向があります。4月からの入学、入社、転勤などに合わせて、新しい住まいを探す人が増えるからです。

このシーズンが去った後に売却をはじめてしまうと、ニーズが極端に少ないことから、売却期間が長引いてしまうことがあります。

様々な事情があるとは思いますが、可能なのであれば、ニーズのある1月~3月に売却できるよう調整するようにしましょう。

【コツ3:旧居の売却額をしっかりと見積もる】

つなぎ融資に申し込む前に、「旧居がどれくらいの価格で売却できそうなのか」はしっかりと見積もっておきましょう。

なお、「周辺エリアの相場からして〇〇万円で売れるだろう」と思っても、競合がいる場合には、その価格よりもずっと下回ってしまうこともあります。

また、「エアコンが故障している」「床下が腐食している」など何らかの欠陥が見つかれば、それに応じて売却価格を下げざるを得なくなることもあります。

見積もりでは、そのあたりも十分に考慮してください。

見積もりが甘いと、資金計画に狂いが生じてしまうこともあります。売却代金でつなぎ融資の返済ができなくなる、といった最悪のケースを避けられるよう、慎重に行ってください。

■まとめ

ここでは、家の住み替えを行う際の一時的な資金不足を補える「つなぎ融資」について解説してきました。

つなぎ融資を活用すれば、旧居売却より新居購入が先行してしまうようなケースであっても、家の住み替えを行うことができます。そのため、引越し期限に遅れる、気になっていた家を他の方に購入されてしまうなどといった問題が起こりにくくなります。

一方で、金利が高く、資金計画に狂いが生じてしまうリスクもあるため、事前にしっかりと見積もりや返済シミュレーションを行っておくことが大切です。

つなぎ融資は、人生でそう何度も利用するものではありません。ほとんどの方にとって、人生ではじめての経験となるのではないでしょうか。不安や迷いがある場合は、不動産会社さんや専門家の方に相談するようにしてください。

この記事を書いた人

archi
archiアーキ君