離婚する際、今まで住んでいた自己所有の住宅について、次のような問題が発生することが考えられます。

・どちらが引き続き自宅に住むのか?
・住宅ローンは誰が払うのか?
・不動産は誰の名義にするのか?
・連帯債務、連帯保証はどうするのか?

住宅ローンをすでに払い終えている場合は、財産分与の問題だけですみますが、住宅ローンが残っている状態で離婚というケースが多くなっています。

離婚に伴う住宅ローンの問題は金額が大きいこともあり、とても面倒で厄介な問題です。弁護士や裁判所に頼っても何ら問題解決にはなりません。最終的に自分で解決するしかありません。

この問題を先送りにしてしまうと、後々、厄介な問題に発展する場合があります。離婚した後、新たなパートナーが見つかり、再婚してマイホームを購入しようとしたところ、従前の住宅ローンの連帯債務者になっているため、住宅ローンが借りられないといった問題が発生する場合もあります。将来の再婚や新しい人生設計のためにも、住宅ローンの問題は先送りせずに、離婚と同時に解決しておくことをおすすめします。

以下、オーバーローンの問題、連帯債務の問題について詳しく見ていきます。そして弁護士や裁判所がどこまで対応してくれるかについてもまとめます。

オーバーローンの問題

住宅を売却しても住宅ローンが残ることを一般的にオーバーローンの状態と言います。住宅ローンは35年という長期(最近ではもっと長期のものもある)で支払う契約が一般的となっており、元利均等で支払う場合、借入当初は利息充当額が大きく、元本が大幅に減っていくのはかなり年数が経過してからになります。

特に新築でマイホームを購入した場合、中古物件と違い、新築プレミアムという価格が上乗せされており、購入した瞬間に1~2割の評価減となるケースも多いです。

例えば3000万円の新築物件を購入したとします。1年以内に売却しようとして不動産業者に評価額の査定依頼をした場合、3000万円で購入したのに、2400~2700万円でないと売れないということは一般的です。

仮に30歳や40歳代で離婚することになった場合、まだ、住宅ローンは返済開始から10年しか経過していない状態では、新規購入時に大きな頭金を入れていない限り(又は中古物件でない限り)、オーバーローンの状態となっている方がほとんどです。オーバーローンの状態だと、売却しても借金が残る状態です。

基本的に、オーバーローンの状態の場合、売却と同時に残債も一括返済を求められます。不足分の現金が用意できないと、金融機関は売却に同意しません。よって、不足分の現金が用意できない場合は売却も難しく、住宅ローンはそのまま継続して払わなくてはならないということになります。

連帯債務の問題

昨今は住宅ローンを借りる際、夫婦の連帯債務で借りるというケースが増えています。これは女性の社会進出がすすんできたことが背景にあります。ハウスメーカーなど住宅を販売する業者側も、夫婦の年収を合算した方が購入予算は多く取れるので、夫婦の連帯債務を前提に考えています。融資の審査をする金融機関側も、年収を合算した方が審査は通りやすくなるため、やはり夫婦の連帯債務をすすめてきます。

住宅ローンを初めて借りる一般消費者は勧められるがまま連帯債務で住宅ローンを契約する場合がほとんどです。その他、購入価格が高く、夫婦の年収が高い場合は、夫婦の連帯債務又はペアローンにするほうが住宅ローン減税の恩恵が大きくなる場合もあり、借りる側にとっても連帯債務にしたほうがメリットがあるのです。

マイホームを購入するときに、まさか将来離婚するとは考えてもいませんから、住宅ローンを借りるときには連帯債務になることが多いのです。

ところが、いざ離婚となると、この連帯債務が大きな問題となってしまいます。離婚によって夫婦の籍は抜けても、住宅ローンの連帯債務の名義は簡単には抜くことができません。なお、連帯債務ではなく、連帯保証の場合も問題の本質は全く同じです。

弁護士にはどこまで頼める?

離婚の際、夫婦間で財産分与や真剣、養育費、慰謝料など、何らかの争いがあり、弁護士を代理人として立てて離婚の交渉を行う場合があります。住宅ローンが連帯債務であった場合、住宅ローンは誰が責任を持って払うか、所有権は誰が持つか、自宅には誰が住むのか、といった調整がなされます。

弁護士に依頼した側は、当事者間の話し合いがまとまれば、問題はすべて解決したと思いがちです。金融機関との調整も弁護士がすべてやってくれていると思う方がいますが、実際にはそうではありません。基本的に、弁護士は夫婦間の争いに関する意見調整は行いますが、住宅ローンに関して金融機関との折衝は行わないのが原則です。別途料金を支払って交渉してくれる場合はありますが、住宅ローンの問題は解決しません。金融機関は、離婚するからといって、弁護士がいくら交渉しても、連帯債務や連帯保証を外してはくれません。つまり住宅ローンの問題は自分で何とかするしかありません。

家庭裁判所の調停で合意離婚したケース

離婚に関して任意での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所を通じて離婚調停を行います。離婚調停でまとまらない場合は訴訟まで発展する場合もあります。仮に、離婚調停で和解が成立した場合、家庭裁判所が作成する和解調書に、自宅の所有権者、住宅ローンの支払義務者、居住権など、夫婦間の権利義務が明記されることがあります。

ただし、この合意はあくまで当事者間に限った合意であって、金融機関がそれに合意しているわけではありません。よって、調停調書に記載があるからといって、金融機関が連帯債務や連帯保証の解除に応じてくれるわけではありませんので、家庭裁判所の調停によって離婚したとしても、住宅ローンの問題は解決しません。

まとめ

この記事では離婚の時に発生する住宅ローンの問題について解説してきました。では離婚するときに住宅ローンの問題を解決するにはどうすればいいのか?「離婚で住宅ローンの連帯債務・連帯保証を外す方法」についてはこちらの記事をご覧ください。