相続 公開: 2026.08.14
父が亡くなったとき自宅の名義は妻・子どもどちらが最適か——二次相続まで見据える
父親が亡くなったとき、多くの家族は自宅を母親名義にしようと考えます。しかし二次相続で配偶者控除が使えなくなり、相続税の基礎控除が減り、小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があります。岡山市中区で数多くの相続案件を手がけてきた立場から、名義の選び方を解説します。
動画でも解説しています: 【相続対策】父親が亡くなったときの自宅の名義、妻と子どもどちらが最適?税金・リスクを徹底解説!
父親が亡くなり、実家をどう相続するか——多くの家族は「母親がそのまま住むのだから、母親名義にしよう」と自然に考えます。
一見これは理に適った選択のように思えますが、実は二次相続で大きな税負担が発生する可能性があります。岡山市中区でも、一次相続で母親名義にしたことで、二次相続で子どもたちが予想外の相続税を払うことになったケースがあります。
今回は、自宅の名義を妻と子どものどちらにするか、税金とリスクの両面から考えます。
二次相続とは——母親が亡くなったときの相続
二次相続とは、最初の相続(一次相続)で相続人となった配偶者が亡くなったときに発生する次の相続のことです。
たとえば父親が亡くなり、母親と子ども2人が相続人になった場合、これが一次相続です。その後、母親が亡くなったときに子ども2人が相続するのが二次相続です。
一次相続では配偶者に大きな税の優遇があるため、多くの場合は相続税がゼロまたは少額で済みます。ところが二次相続では配偶者がいないため、この優遇が使えず、子どもたちの税負担が大きくなることがあります。
母親名義にすると二次相続で税負担が増える理由
母親名義にすると二次相続で税負担が増える理由は、主に3つあります。
理由1|配偶者の税額軽減が使えなくなる
一次相続では、配偶者が相続する財産のうち、配偶者の法定相続分の2分の1または1億6,000万円のいずれか大きい方まで相続税がかかりません。これを「配偶者の税額軽減」といいます。
この制度のおかげで、一次相続では配偶者に相続税がかからないことがほとんどです。
ところが二次相続では母親が亡くなっているため、この軽減は使えません。子どもたちが相続する財産にはそのまま相続税がかかります。
理由2|相続税の基礎控除が減る
相続税には基礎控除があり、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数まで相続税がかかりません。
一次相続では法定相続人が母親と子ども2人の3人なので、基礎控除は4,800万円です。ところが二次相続では母親が亡くなっているため、法定相続人は子ども2人だけになり、基礎控除は4,200万円に減ります。
つまり600万円分、課税される財産が増えることになります。
理由3|小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性がある
小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた土地の評価額を80%も下げられる非常に大きな優遇です。
たとえば評価額5,000万円の土地でも、この特例を使えば1,000万円の評価になります。これだけでも相続税に大きな差が出ます。
ただしこの特例を使うには条件があり、基本的には配偶者か同居していた親族が対象です。
子どもが母親と同居していない場合、二次相続でこの特例が使えず、相続税が高くなる可能性があります。
具体例——母親名義と子ども名義でどれだけ変わるか
具体的な数字で見てみましょう。
母親名義にした場合
たとえば評価額5,000万円の自宅を母親が相続したとします。
一次相続では配偶者の税額軽減があるため、相続税はゼロです。
ところが母親が亡くなり、二次相続で子ども2人が相続する場合、小規模宅地等の特例が使えなければ評価額5,000万円に対して相続税がかかります。基礎控除4,200万円を引いても800万円が課税対象になり、相続税が発生します。
子ども名義にした場合
一方、一次相続の時点で子どもが自宅を相続した場合、小規模宅地等の特例を使えば評価額は1,000万円に下がります。基礎控除4,800万円の範囲内に収まり、相続税はゼロです。
さらに二次相続では自宅は相続財産に含まれないため、母親の預金など他の財産だけが対象になります。
母親の気持ちも大切——合理性と感情のバランス
ただしここで強調しておきたいのは、これはあくまでも税制面での合理的な考え方だということです。
実際に住み続ける母親の気持ちも非常に大切です。長年住み慣れた家を手放すのは精神的に大きな負担になるかもしれません。
また母親が認知症と診断された場合、実家を売却することができなくなる可能性もあります。認知症の方は法律行為ができないとされているからです。
合理性と感情面のどちらを優先すべきかは、一概には決められない難しい問題です。
家族でじっくり話し合う
自宅の名義をどうするかは、次の点を踏まえた上で家族でじっくり話し合い、総合的に判断することが大切です。
- 一次相続と二次相続の税負担をシミュレーションする
- 母親が住み続けたいかどうか
- 子どもが母親と同居しているか
- 母親の健康状態と将来の見通し
また相続は非常に複雑で難しい問題です。法律や税制も頻繁に変更されますので、分からないことがあれば躊躇せず専門家に相談してください。
税理士や弁護士など専門家は、あなたの家族の状況に合った適切な選択肢を提案してくれます。
まとめ
- 二次相続では配偶者の税額軽減が使えない——一次相続で母親名義にすると、二次相続で子どもたちの税負担が増える
- 相続税の基礎控除が600万円減る——法定相続人が1人減るため
- 小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性——子どもが母親と同居していない場合
- 母親の気持ちも大切——合理性と感情面のバランスを取る
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執筆: アーキ不動産(株式会社アーキ・クリエイト)/ 岡山県知事免許(9)第3595号・岡山県宅地建物取引業協会会員。 記事の内容は公開時点の情報です。税制・法令の適用は個別の状況により異なるため、実行前に専門家へご確認ください。