例えば実家を相続して、きょうだい3人で共有したとします。

共有持分をもつ各共有者は、共有不動産(この場合、実家)に対して次の行為が認められています。

保存行為共有不動産への出入りなど共有者全員が可能
管理行為共有不動産の貸し出しなど持分割合の過半数の同意
変更行為共有不動産の売却・解体など共有者全員の同意

このように共有不動産を売却するには、全員の同意が必要です。しかし、共有持分は個人の所有物ですので勝手に売却できるのです。

共有とは

1つのものを複数人で共同所有することを共有といいます。

「共有不動産」とは、複数人で共有している不動産のことで、複数人の共有名義で登記するため「共有名義不動産」とも呼ばれます。

共有持分は自由に売却できる

共有持分は共有者個人の所有物なので、各共有者が自由に売却できます。

個人の所有物の売却について、民法では以下のように定められています。

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

民法第206条

共有持分を売却されたときに発生するトラブル

1.購入者が共有不動産に出入りする
2.購入者と税金を共同負担
3.持分の売却をせまられる
4.共有物分割請求で共有不動産を分割される

1.購入者が共有不動産に出入りする

共有持分を売却された場合、その購入者が共有不動産に出入りすることが可能になります。

見ず知らずの人間が出入りされるのは気持ちの良いものではありません。精神的負担だけでなく、共有不動産をめぐっての争いになることもあります。

2.購入者と税金を共同負担

共有不動産の税金は共有者全員で持分割合に応じて負担しなければなりません。

もし購入者が税金を滞納した場合でも、共有者全員による税金滞納とされます。

共有不動産の税金を滞納すると、自治体から督促状が届くだけでなく、延滞税という利子も課せられてしまいます。

共有持ち分購入者のせいで自分の財産を差押えられてしまうリスクがあるのです。

3.持分の売却をせまられる

購入者が投資家や不動産業者の場合、持分の売却をせまられることになる可能性が高いです。

投資家や不動産業者は、共有不動産を手に入れて売却益を得ることが目的だからです。

共有持分を購入する不動産業者の中には、他共有者へ嫌がらせをおこない、持分を買取しようとする悪徳業者もいますので注意が必要です。

法律上、売りたくなければ共有持ち分を売る必要はありませんので、嫌がらせが続く場合は弁護士に相談しましょう。

嫌がらせが悪質な場合、法的措置も視野に入れて弁護士へ相談しましょう。

4.共有物分割請求で共有不動産を分割される

持分売却に応じない場合、購入者から共有物分割請求を起こされるリスクがあります。

共有物分割請求とは、共有不動産の分割方法を決めるための話し合いの総称で、以下の3ステップで進行します。

共有物分割協議(共有者のみで話し合う)

共有物分割調停(調停委員を含めて話し合う)

共有物分割請求訴訟(分割方法を裁判所に決めてもらう)

話し合いで共有不動産の分割方法が決まらない場合、最終的に地方裁判所へ共有物分割請求訴訟が申し立てられます。

共有物分割請求訴訟における裁判所の判決により、共有不動産の分割を命じられた場合、その内容に従わなければなりません。

これを回避するには、共有者の持分さえ買取する必要がありますが、多くの場合は共有不動産を複数個に分筆したり、売却して売却益を分け合うことになってしまうケースが多いです。

共有持分を売却された場合の対処法

他共有者に共有持分を勝手に売却された場合、次の対処法が考えられます。

1.売却された共有持分を買い戻す
2.共有物分割請求で共有関係を解消する
3.自分の共有持分を売却

1.売却された共有持分を買い戻す

共有不動産を手放したくない場合、売却された持分を買い戻すしか方法はありませんが、まとまった資金が必要になります。

しかも、相手が投資家や不動産業者の場合、相場以上の高値での買取を要求されることを覚悟しなければなりません。

そうした場合、他共有者と資金を出し合って購入者の持分を共同で買い取るといった方法も検討するとよいでしょう。

2.共有物分割請求で共有関係を解消する

購入者からだけでなく、自分から共有物分割請求を起こすことも可能です。

共有物分割請求により、共有不動産を分割することにより、購入者や他共有者との共有関係を確実に解消できます。

ただし、なかなか話し合いがまとまらないことが多く、最終的に裁判になるケースがあります。

裁判の手続きにも手間がかかりますし、高額な裁判費用を負担しなければならないため、精神的・金銭的な負担を覚悟しなければなりません。

3.自分の共有持分を売却

あなたの持分も自由に売却することができます。

他共有者の同意を得る必要はないので、自分で購入者を探して売却すれば、共有関係から抜け出すことができます。

売却後は共有不動産に関する権利をすべて失いますが、共有不動産に未練がない場合は、わずらわしい共有関係から抜けるには最適な方法です。ただ、共有持ち分を売却する場合は、事前に他共有者へ伝えておきましょう。

他共有者の同意がなくても持分売却はできますが、何も伝えずに持分売却すると、売却後に関係が悪化することもあり得ます。

事前に伝えておけば、ある程度の意思疎通が図れるのでトラブルを避けられますし、場合によっては他共有者が持分を買取してくれるかもしれません。

この記事を書いた人

archi
archiアーキ君