不動産を相続する時には、相続登記が必要です。簡単に説明すると、以前の所有者より自分の名義に変更する手続きのことです。日本の法律上、相続する際に登記をしなくてはならないという決まりはありませんが、名義を変更しないことによるリスクもあるため、なるべく早く相続登記を行うことを推奨します。

今回は相続登記の方法、必要書類や提出期限について、詳しく解説していきます。

相続登記とは?

不動産を相続する前に「相続登記」とは何なのか、基本的な部分を理解しておきましょう。

相続登記は何のためにするのか?

亡くなった方が名義になっている不動産を、相続する人の名義に変更することを「相続登記」といいます。持ち家のみならず、アパート、マンション、どんな不動産においても通常は、”登記されているもの”です。登記することにより、不動産の内容や権利者に関する情報を公表することができます。

登記情報は、不動産の地番が分かれば、法務局やネットを通じて誰でも閲覧することができます。その不動産の土地の面積、種類、住所、所有者情報、抵当権の設定状況等、多くの情報を見ることができます。不動産に関するこれらの情報を開示することにより、不動産売買等の時に安心して取引が行えるようにしています。

不動産の所有者が変われば、当然、その登記情報は不正確となります。正確な情報とするためにも、所有名義を相続した方の名前に変更しなくてはなりません。これが、「相続登記」です。

配偶者が亡くなり、自分が不動産を相続することになった時などは、早めに相続登記を行うようにしてください。

相続登記の種類

相続登記には、大きく分けて「単独所有登記」と「共有所有登記」の2つがあります。

「単独所有登記」とは、文字通り、その不動産が特定の1人の所有となる場合にする登記のことです。一方、「共有所得登記」は、複数人数の共有財産として不動産を相続する場合に必要な登記のことです。

相続時に法定相続人が1人しか存在しない場合、遺産分割協議においてその内の誰かが不動産を相続することになった場合、遺言書により特定の1人に遺贈されていることが確認できる場合等は、「単独所有登記」を行います。

逆に法定相続人が複数人いて、誰の所有物にするか遺産分割協議でも決めかねた時、もしくはその話し合いも行われない時等は、「共有所有登記」とするケースもあります。また、被相続人によって遺産を分割することが一定期間において禁止されている時も、「共有所有登記」の手続きとなります。この場合、2人以上の人が所有者に該当します。

相続登記しなくてはならないケース

不動産を相続する際は、「相続登記」が必要となります。

自宅(持ち家)の他、土地やその他の建物、アパート、マンション、商業施設、どのような種類の建物であれ、不動産を相続する時には、相続登記をしておきましょう。

亡くなった方の名義のまま放置しておくのは良くありませんので、相続と登記はセットとして考えておくと良いでしょう。相続登記の期限や登記しないまま放置するリスク、デメリットについても後ほど詳しく解説します。

相続登記の方法と必要書類について

相続登記の方法と必要書類についてご紹介します。

相続登記の申請方法と必要書類

相続登記は、相続した不動産を管轄している法務局にて行います。

まず、準備するべきなのは、「登記申請書」です。この書類の他にもいくつも必要書類がありますが、それらと費用を合わせて法務局に提出します。

必要書類はケースによって異なるため、下記を参照してください。

多くの書類を準備しなくてはいけないため、ある程度手間と時間がかかります。そのため、司法書士に依頼し、代行してもらう方もたくさんいます。

相続登記の申請が完了すると、新たな所有者(相続人)に「登記識別情報」が通知されます。亡くなった方から、所有者の名前に名前が書き換わっているのも確認できます。この交付をもって、相続登記は完了します。

法定相続人の全員の共有名義として不動産を相続する場合

法定相続人全員が共有する不動産として相続登記する場合の必要書類は以下の通りです。

①登記申請書

登記申請書は自分で作成します。

②被相続人の戸籍謄本等

被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本等を、被相続人の本籍地となる役所にて申請し、取得します。

④相続人全員の戸籍謄本

法定相続人全ての戸籍謄本をそれぞれの本籍地となる役所にて申請し、取得します。

⑤相続人全員の住民票

上記同様に、相続人全ての住民票をそれぞれの居住地となる役所にて申請し、取得します。

⑥不動産の固定資産評価証明書

不動産の所在地となる役所にて申請、取得することができます。

⑦相続関係説明図

こちらも自分で作成する書類です。

遺産分割協議で特定の相続人が不動産を相続する場合

相続人が複数いる状況下で、特定の相続人が不動産を相続する際の登記に必要な書類は以下の通りです。

①登記申請書

登記申請書は自分で作成します。

②被相続人の戸籍謄本等

被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本等を、被相続人の本籍地となる役所にて申請し、取得します。

③被相続人の住民上の除票

被相続人の住居地の役所にて申請し、取得します。

④相続人全員の戸籍謄本

遺産分割協議の対象となった相続人全ての戸籍謄本をそれぞれの本籍地となる役所にて申請し、取得します。

⑤相続人全員の印鑑登録証明書

こちらも同様に、全員の住居地の役所にて申請し、取得します。

⑥不動産相続人の住民票

特定の相続人となった人の住民票を住居地の役所で申請し、取得します。

⑦遺産分割協議書

相続人たちで事前に作成したものです。

⑧不動産の固定資産評価証明書

不動産の所在地となる役所にて申請、取得することができます。

⑨相続関係説明図

こちらも自分で作成する書類です。

遺言書の通りに不動産を相続する場合

遺言書によって、特定の1人が不動産を相続する際の登記に必要な書類は以下の通りです。

①登記申請書

登記申請書は自分で作成します。

②被相続人の戸籍謄本等

被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本等を、被相続人の本籍地となる役所にて申請し、取得します。

③不動産の受遺者の住民票

本人の住居地となる役所にて申請、取得します。

④遺言書

自筆証書遺言書、秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所にて「検認」を受けておく必要があります。

⑤不動産の固定資産評価証明書

不動産の所在地となる役所にて申請、取得することができます。

相続登記に必要な費用

相続登記には、下記の費用がかかります。

<登録免許税>

相続登記は、相続する不動産を管轄する法務局にて申請します。この際、法務局に対し「登録免許税」と呼ばれる手数料を支払います。法定相続人が相続する場合は、不動産の固定資産評価額の0.4%が「登録免許税」として課せられます。

遺言等により、法定相続人以外の人が不動産を相続する場合は、固定資産評価額の2%が「登録免許税」となります。

<戸籍謄本等を取得する費用>

上記の通り、登録申請にはさまざまな書類が必要です。その内、戸籍謄本については1通450円、除籍謄本、改製原戸籍謄本は1通750円の取得料が必要になります。

本籍地での役所にて申請、取得が可能ですが、遠方等の場合は郵便で取り寄せるため、郵送料もかかります。

<住民票や印鑑証明書を取得する費用>

住民票や印鑑登録証明書の取得にもお金がかかります。区市町村によって変動があるものの、1通あたり250~300円程度が相場となります。

<固定資産評価証明書を取得する費用>

1通あたり300円程度の取得料が必要です。

<登記簿を取得する費用>

相続登記には直接使用しませんが、登記申請書作成時に不動産登記簿を取得しておく必要があります。この登記簿の取得費用は1通あたり600円です。

<司法書士の依頼料>

相続登記の手続きを司法書士にお願いするとなると、3~7万円程度の司法書士報酬がかかります。自分でもできなくはありませんので、良く検討して決めると良いでしょう。

相続登記の期限とは?

相続登記は任意です。期限も設けられていません。

1年以上経過したからといって登記できなくなることはありませんし、登記せずにいても法律違反ではありません。違法性がないため、放置している人も少なくありませんが、リスクもあることを理解しておきましょう。

相続登記をしないデメリットとリスク

基本的には、不動産の相続時に相続登記を行うことを推奨しています。登記しなくても良いものですが、放置するデメリットやリスクがあるので、なるべく早めに手続きすることをおすすめしています。

売却や活用が難しくなるデメリット

被相続人の名義のまま、不動産を活用するのは難しいです。将来、売却したり賃貸として活用する未来を検討するのであれば、相続時に相続登記を済ませておくと良いでしょう。

例えば、売却時には現在の所有者名義になっている必要があります。被相続人から、買主に不動産を譲渡することはできないからです。

抵当権の設定なども同様です。登記している人の名前が、現在の所有者と一致している必要があります。亡くなった方の名義ではできることが限られるため、そういった事態になってもスムーズに動けるよう、先に相続登記を行っておくべきといえます。

一部の相続人が勝手に共有登記にし、売却してしまうリスク

遺産分割協議上、もしくは、遺言書によって、自分が不動産を相続するとなっていたのに相続登記を行わないと、別の法定相続人の誰かに「共有登記」をされてしまう可能性があります。

共有登記がされてしまえば、その不動産は法定相続人全員の共有財産となります。その状態を悪用し、「自分の所有分を売ります」等と、不動産の一部を業者に売却してしまうといったこともできてしまいます。

法定相続人が複数人いる場合は、トラブルを避けるためにも速やかに相続登記を行いましょう。

法改正により、早く相続登記を申請した第三者に対抗できなくなるリスク

2019年度までは、不動産の相続時に登記を行わなくとも、第三者に不動産の所有権を主張することができました。つまり、第三者が不動産の登記をしてしまったとしても、その第三者を排除して自身の相続登記が可能でした。

しかし、2019年に民法が改正され、その後は第三者に不動産の所有権を主張することができなくなりました。先に相続登記した方が優先される仕組みになったのです。

相続登記のタイミングが重要視されるようになったため、相続時に速やかに登記の手続きを行わないと、別の人に登記されてしまうリスクが発生するようになったのです。せっかく不動産を相続しても別の人の誰かの手に所有権がわたってしまうこともあるため、相続したら、必ず相続登記も併せて行う必要が出てきました。

相続登記は司法書士に任せるのがおすすめ

このように、相続登記をしないことはデメリットやリスク、トラブルの原因になります。

しかし、相続登記はややこしく、必要書類も多いため、相当な時間がかかります。それを全て代行してくれるのが、「司法書士」です。

司法書士は登記のスペシャリストですので、依頼すれば、すぐに相続登記を代行してくれます。法務局より発行される登記識別情報の取得をもって、相続登記を完了します。

戸籍謄本、除籍謄本、相続関係図、いろいろな書類の取得や作成まで全て代行してくれるので、スムーズに相続登記が行なえます。

依頼費用は相続登記のみで3~7万円程度です。相続人調査等の細かい依頼も加えると、全部で10~15万程度かかります。面倒な申請手続きをさっと終わらせたい方にはとてもおすすめです。

まとめ

親族が亡くなると、さまざまな手続きに追われることとなります。忙しい日々となりますが、不動産の相続をした場合は、相続登記とセットで「完了」するようにしてください。

相続登記の申請を行わず放置していると、思わぬトラブルに発展することもあるため、速やかに法務局へ必要書類を提出し、登記識別情報の交付をしてもらってください。

必要書類が多く、時間と手間のかかる作業となりますので、司法書士等の専門家に依頼するのもおすすめです。費用はかかるものの、時短になりますし、安心して任せられます。