相続が発生して、突然あったこともない異母兄弟が現われた!

生前付き合いがなかったのだから相続させたくない!

そんな思いを抱いてしまうことはありますよね。

異母兄弟は血のつながりはあっても、関係が良くないことはよくあります。

しかし相続が発生したとき、異母兄弟にも相続権が生じることがあります。

もし異母兄弟に相続させたくないと思う場合には、何か対応策があるのでしょうか?

対応策を考える前に、押さえておかなければならない点があります。

それは、「誰にとっての異母兄弟か」ということです。

なぜなら「誰にとっての異母兄弟か」という点で相続分などが異なるからです。

異母兄弟の相続で問題になるのは、次の2つのケースです。

❶被相続人の子どもに異母兄弟がいるケース(親の相続に関して自分の異母兄弟が問題になるケース)

❷被相続人に異母兄弟がいるケース(自分や兄弟の相続に関して自分の異母兄弟が問題になるケース)

❶被相続人の子どもに異母兄弟がいるケース

事例

①父Tが亡くなったので相続人調査をしたところ、母Sと子どもCのほかに、認知している婚外子Dがいることが判明した。

②亡くなった父Kには、母Jと子どもCのほかに、前婚の妻との間に子どもDがいた。

このような場合には、被相続人の子どもCにとっての異母兄弟Dの相続が問題になります。

親の相続における異母兄弟の相続分

被相続人の子どもの異母兄弟ということは、その異母兄弟は被相続人の子どもであるということになります。

子どもは第一順位の法定相続人になるので、異母兄弟には相続権があります。

法定相続分は、被相続人に配偶者がいれば「配偶者2分の1、子ども2分の1」となります。

ただし、配偶者がいなければ子どもがすべての財産を相続します。

子どもが複数いる場合には、均等に分けることになります。

異母兄弟であるといっても、被相続人にとっては子どもという立場では同じです。したがって異母兄弟同士の相続分が変わることはありません。

また現行の民法では、嫡出子であっても非嫡出子であっても相続分は同じとなります。

最初にあげた2つの事例では下記のようになります。

①父Tが亡くなったので相続人調査をしたところ、母Sと子どもCのほかに、認知している婚外子Dがいることが判明した。

→配偶者Sが1/2・子どもCが1/4・婚外子Dが1/4を相続

②亡くなった父Kには、母Jと子どもCのほかに、前婚の妻との間に子どもDがいた。

→配偶者Jが1/2・子どもCが1/4・子どもDが1/4を相続

親の相続における異母兄弟の遺留分

被相続人の子どもに異母兄弟がいる場合には、異母兄弟は相続に関して遺留分があります。

遺留分を有する相続人は、遺留分を侵害する遺贈や贈与に対して、侵害額相当の金銭を支払うように請求する権利(遺留分侵害額請求権)を持ちます。

そのため、①、②の事例で「子どもCにすべての財産を相続させる」という遺言書が残されていても、Dから遺留分侵害額請求がなされたときには、Cは侵害額相当分の金銭を支払う必要があります。

ただし、被相続人の子どもに異母兄弟がいる場合でも、異母兄弟が「非嫡出子で認知されていない場合」には相続権は発生しません。

異母兄弟が被相続人の子どもであっても、認知がなされなければ、法律上の親子関係は発生しないからです。

つまり非嫡出子の異母兄弟がいる場合には、「認知の有無」が重要なポイントになります。

❷被相続人に異母兄弟がいるケース

亡くなったAには、同じ両親から生まれた弟のBのほかに、母の前婚の子どもである兄C(異母兄弟)がいるとします。

なおAには配偶者や子どもはおらず、両親もすでに他界しているものとします。

法定相続では、相続順位は次のようになります。

  • 第一順位 被相続人の配偶者・子などの直系卑属
  • 第二順位 親などの直系尊属
  • 第三順位 兄弟姉妹

したがって異母兄弟がいても、子どもや親などがいれば兄弟には相続権はありません。

しかし兄弟姉妹に相続権が発生する場合には、被相続人の異母兄弟も相続権を有します。

異母兄弟の相続分

被相続人の兄弟姉妹が相続人になるときには、異母兄弟も相続人になります。

しかし両親を同じくする兄弟(全血兄弟)と片親を同じくする兄弟(半血兄弟・異母兄弟)では、相続分は異なります。

半血兄弟となる異母兄弟の相続分は、全血兄弟の2分の1とされます。

上記の事例では、被相続人Aの弟Bは3分の2、異母兄Cは3分の1の法定相続分を有することになります。

異母兄弟の遺留分

被相続人の異母兄弟が相続人になるときには、異母兄弟に遺留分はありません。

したがって被相続人が「全血兄弟のみに財産をすべて相続させる」、「第三者に財産をすべて遺贈する」などという遺言書を残した場合、異母兄弟から遺留分侵害額請求をされることはありません。

ただし、被相続人の異母兄弟が亡くなっていたとしても、その子どもがいれば、代襲相続することになります。

したがって異母兄弟が亡くなっているときには、その子どもがいるかどうかの確認が必要です。

なお兄弟姉妹の代襲相続については1代に限る(子どもまで)とされており、2代目以降(孫など)は代襲相続人にはなりません。

異母兄弟に相続させたくない

異母兄弟に相続させたくないというときには、下記2つの方法がありますが、必ず相続させないようにできるわけではありません。

①遺言により相続させない

被相続人の子供が複数人いるケースや配偶者が生きているケースでは、遺言によって相続する財産の割合を指定することができます。相続財産を相続させたくない相手には、相続をしない・相続分はゼロと指定することが可能です。

この方法は、遺留分を請求する権利を持っていない被相続人の兄弟姉妹に対しては有効で、相続財産を兄弟姉妹以外に相続させると遺言すればその兄弟姉妹の相続権を奪うことができます。

しかし、被相続人の配偶者・直系尊属・直系卑属にあたる相続人へ付与されている遺留分を侵害することはできません。

被相続人の子どもが相続財産を受け取れなかった場合、遺留分請求を行うことは覚悟しておきましょう。

廃除

どうしても相続させたくない相続人がいる場合、廃除という制度が考えられます。

相続財産を承継させたくない相続人の相続権を奪ってしまう制度です。

強力な方法であるため、厳格な要件があります。

1.被相続人に対して一方的な虐待や重大な侮辱を加えたとき
2.著しい非行があったとき

上記の要件を満たす推定相続人がいるケースであれば、相続権の廃除が認められる可能性があります。ここでの推定相続人の行為は、単純に犯罪を犯したという程度ではなく、被相続人の財産・精神などに害を及ぼす行為でなければなりません。

ですので、相当特殊なケースであり、一般的に利用できる制度ではないでしょう。

相続権の廃除を行うには、生前に、家庭裁判所に廃除の審判の申立てを行う方法(生前廃除)と、遺言によって書き残しておき、自らの死後に遺言執行者によって家庭裁判所に廃除の審判の申立てを行なってもらう方法(遺言廃除)があります。

申立てによって家庭裁判所で審判が行われ判断されます。

異母兄弟は結婚できるの?

異母兄弟は結婚できません。

民法で定められています。

(近親者間の婚姻の禁止)

第734条

直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

血がつながっている限り、結婚はできないということです。

戸籍上、親族関係がなくなるような関係にあっても、血がつながっている場合には結婚できません。

連れ子同士の結婚は可能です。直接的に血のつながりのない、連れ子同士の結婚は可能です。

また、血のつながりがなくても、養親子関係にあったもの同士は結婚できません。

血のつながりがある場合に結婚が禁止されている理由は諸説ありますが、子どもが生まれてくる場合に遺伝学的に疾病や障害の発生が考えられるということが一般に言われています。

異母兄弟が結婚したらどうなるのか?

結婚してしまったとしても、罰則などはありません。

本人同士が知らずに結婚してしまったというケースもあるようです。

婚姻関係は成立しますが、あとから近親者であることが分かった場合には婚姻の無効原因となり、婚姻自体がなかったことになります。

とはいえ、ほとんどの場合、親族は気付くので知らずに結婚したというのはレアケースでしょう。

異母兄弟との遺産分割方法

遺産分割協議をする場合には、相続人全員参加の全員同意が条件です。

遺言書に記載されていて、異母兄弟がいたと判明して、相続人に該当する場合は、異母兄弟にも、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。

異母兄弟の連絡先が分からない場合

遺言書に異母兄弟がいることが記載されていて、遺産分割協議をすることになった場合に、連絡先などが記載されていれば連絡を取れば良いですが、行方が分からないような場合にはどうしたら良いでしょうか?

父の財産を相続するにあたり、自分に異母兄弟がいることを知った場合には考えられるのは下記の方法です。

①父の親戚関係に聞く

自分自身は知らなかったかも知れませんが、自分より古く関係性のある親戚は知っているかも知れません。

まず、手始めに父親の親戚に聞いてみましょう。

②戸籍を調べてみる

親が生まれてから亡くなるまでの戸籍から異母兄弟の情報が分かれば、異母兄弟の「戸籍の附票」から調べることができます。

異母兄弟の連絡先が分かれば、遺産分割協議に参加してもらうように伝え参加してもらうことになります。