相続 公開: 2026.11.13
相続した古い家、そのまま売る?解体して売る?——岡山市中区の2つの実例で見る損得の分かれ目
「税金がかかるから解体しないと売れない」は思い込みかもしれません。空き家の3,000万円特別控除を使って更地で売った例と、計算すると古家付きのほうが300万円多く残った例。岡山市中区の一級建築士が、解体の損得を分けるポイントを実例で解説します。
動画でも解説しています: 相続した古い家、そのまま売却?それとも解体?どっちがお得?/アーキ不動産(岡山市中区)
相続した古い家を売るとき、必ず出てくるのが「解体して更地で売るか、古い家が付いたまま売るか」という問いです。
結論から言うと、どちらが得かは物件ごとに違い、計算しないと分かりません。アーキ不動産が実際にお手伝いした2つの売却で、結果が正反対になった例をご紹介します。
税額の計算は売却価格・取得費・特例の適用で変わります。本記事は一般的な情報提供であり、最終的な判断は税務署または税理士へのご確認をお願いしています。
まず押さえる前提——空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売ったときの利益(譲渡所得)から3,000万円を差し引ける特例があります。もとは自分が住んでいた家を売るときの制度ですが、一定の要件を満たす相続空き家にも使えます。
要件の中で判断を分けるのが、「1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家」であることと、「耐震基準を満たすように改修して売る、または解体して売る」ことです。つまり古い家をそのまま売っても、この特例は原則使えません(2024年以降は買主が翌年2月15日までに解体・改修する場合も認められるようになりました)。
要件の全体は「空き家の3,000万円特別控除を受けられる要件」にまとめています。
実例1|特例の要件に合っていたので解体して売った
一つ目は、相続した家が1981年以前の建物で、親が一人で住んでいて、相続後は誰も使っていない——特例の要件にぴたりと合っていたケースです。
建物は相当傷んでいました。最初は「せっかくなので、誰か使ってくれないか」というお気持ちもありましたが、建物の状態と税金の両面から解体して更地で売ることをご提案しました。結果、3,000万円の控除で譲渡所得税はかからず、更地として買主も見つかりました。
ここで一つ、知っておいてほしい盲点があります。解体費用は土地の売却価格から差し引かれて、手残りが決まります。
- 2,000万円の土地で解体費500万円なら、手元に残るのは1,500万円
- 1,000万円の土地で解体費500万円なら、手元に残るのは500万円
土地の価格が低い場所では、解体費の重みがまったく違います。「特例が使えるから解体」と決める前に、土地の価格に対して解体費が何割になるかを見てください。
実例2|計算したら古家付きのほうが300万円多く残った
二つ目は、お父さまが事業をされていたお宅で、娘さん2人が相続されたケースです。
ご相談の最初に、お客さまから「税金がかかるから、解体しないと売れないと聞いた」と言われました。そこで一緒に計算をしてみました。
- 解体して更地で売る:解体費がかかる。特例で税金はかからない
- 古家付きのまま売る:解体費はかからない。特例が使えず譲渡所得税がかかる
精密に計算した結果、税金を払っても、古家付きで売ったほうが約300万円多く手元に残ることが分かりました。「解体するのはやめましょう。税金を払っても300万円残ります」とご提案し、そのとおりに売却しました。
人から聞いた「解体しないと損」という話を、そのまま信じていたら300万円を失っていたことになります。
判断を分ける3つの数字
2つの実例から、解体の損得を分けるのは次の3つの数字です。
- 解体費用。道路の広さ・建物の構造・家財の量で150万〜300万円以上と幅があります(内訳は「空き家の解体費用はいくらかかる」)
- 譲渡所得税の額。売却価格から取得費(買ったときの価格、不明なら売却価格の5%)と譲渡費用を引いた利益に課税されます。相続した古い家は取得費が分からないことが多く、利益が大きく出がちです。だからこそ特例が効きます
- 古家付きで売れる価格と、更地で売れる価格の差。買主がリフォーム前提で探している地域では、古家付きでも価格が落ちないことがあります
この3つを並べて、「解体して売った場合の手残り」と「そのまま売った場合の手残り」を両方計算する。それだけで判断できます。
税務署への確認を必ず入れる
特例が使えるかどうか、税額がいくらになるかは、最終的に税務署の判断です。アーキ不動産では、シミュレーションをお見せしたうえで、必ずご本人から税務署に確認していただき、その結果を踏まえて売り方を決めるという手順をとっています。申告は売却した翌年の確定申告です。「使えると思っていた特例が使えなかった」という事態を避けるための、慎重な進め方です。
まとめ
- 解体して売るか、そのまま売るかは物件ごとに計算して決める
- 特例の要件に合い、土地の価格に対して解体費が小さいなら解体が有利
- 税金を払っても古家付きのほうが手残りが多いケースは実際にある(実例で300万円の差)
- 判断を分けるのは、解体費・譲渡所得税・古家付きと更地の価格差の3つ
- 特例の適用は売る前に税務署へ確認する
アーキ不動産では、一級建築士が建物の状態を見て「そのまま売れるか」を判断し、解体した場合としなかった場合の手残りを並べてご提案しています。岡山市中区で相続した家の売却をお考えの方は、解体を決める前にご相談ください。
執筆: アーキ不動産(株式会社アーキ・クリエイト)/ 岡山県知事免許(9)第3595号・岡山県宅地建物取引業協会会員。 記事の内容は公開時点の情報です。税制・法令の適用は個別の状況により異なるため、実行前に専門家へご確認ください。