事実婚や内縁の妻は、生命保険の受取人に指定することができますが、一定の要件を満たした場合に限ります。無事に受取人になれたとしても、要件を満たしていないと内縁の妻は生命保険金と保険料の両方で税金面で不利になってしまいます。

内縁の妻は、有効な婚姻関係にある女性と異なるため、生命保険においても、法制度や行政、法律と同様の留意点がいくつかあります。

今回のテーマは「内縁の配偶者は生命保険の受取人になれるか」です。

条件を満たせば、内縁の配偶者を生命保険の受取人に指定することができます。

生命保険の受取人は、配偶者または二親等以内の血族に限られます

一般的に、生命保険の受取人の範囲には「配偶者と血族を含む2親等内の親族」が含まれると言われています。

ここでいう、事実婚や内縁の妻は “配偶者 “ではありません。

二親等に該当する血族は、それぞれ配偶者、正妻・正夫と呼ばれます。”兄弟姉妹、子供、孫、両親、祖父母 “です。

保険金請求によってもたらされるトラブルを阻止するためです。これを知らずに内縁の配偶者を受取人に指定しても、保険会社は保険の引き受けは認めません。

内縁の配偶者はいかなる形でも保険金を受け取れないかというと、これは事実ではありません。

現行制度では婚姻届を提出しなければ法律上妻になることはできませんが、手続きをすることで内縁の配偶者が生命保険の受取人になることができる場合があるのです。

内縁の妻が生命保険金の受取人になるための要件

では、内縁の妻が生命保険金の受取人になるための要件は何でしょうか。正式な手続きでは、次の3つの事情が挙げられています。

戸籍上、お互いに配偶者が記載されていないこと。

どちらかの戸籍に配偶者が記載されていないことが、まず前提条件となります。

例えば、「すでに配偶者はいるが、離婚せずに別のパートナーと3年以上同棲しているので内縁関係である、というのはダメです。

さらに、相手に内緒で配偶者がいた場合、内縁の妻は保険金を受け取ることができません。

保険会社が指定する期間、同居人と同居していること

被保険者は、2つ目の要件として保険会社が記載する期間、同居していることが必要です。

事実上のパートナーから保険金を受け取る場合、保険会社、特に大手の保険会社は警戒して、具体的な情報をホームページには公開していません。

さらに、保険の条件や同棲の具体的な内容から、保険会社の定める期間同棲していても認められないこともあります。

保険会社が定める期間、生計を共にしていること

生命保険金を受け取る資格のある内縁の妻として保険会社に認められるためには、保険会社が定める期間、二人が同居していることも必要です。

同居していても、別々の世帯で生計を立てている場合は、内縁の妻とは言えません。

条件1~3が実証されていることが必要です

この3つの条件を満たしていれば、内縁の妻であっても生命保険金を受け取ることができますが、それぞれを裏付ける法的な書類が必要です。

戸籍謄本

戸籍に記載されている配偶者がいない、という1つ目の条件を証明するためには、それぞれの戸籍謄本が必要です。

住民票

2番目の条件を証明する記録は、「住民票」になります。各人の住民票によって、現住所での同居期間が明らかになります。

収入証明

同居していることを証明するためには、主たる生計者としての地位と主たる生計者への扶養の両方を証明する必要があります。婚姻関係がない場合、これを証明するのは少し難しいかもしれません。

例えば、女性は、男性の収入が生計維持のために利用されていることを示すことに加えて(例えば、彼は家賃や光熱費の口座名義人である)、彼女は男性よりも少ない収入と、彼女は主に彼の収入に依存していることを証明できるようにする必要があります。

また、「事実婚状態」であることを証明し、社会通念上許容される生活であることを証明する必要があります。実際に社会保険に加入していることを証明するものなどが必要になることもあります。

保険会社によって要求されるものが異なることに留意してください。

内縁の妻を生命保険金の受取人にできるかどうかは、各保険会社が自由に判断することができます。

保険会社は、先に挙げた3つの条件に加えて、他の条件を課すこともありますし、条件そのものが変わることもあります。

例えば、ある保険では3年間の同居を要求し、別の保険では5年間の同居を要求するかもしれません。また、被保険者が保険金の受取人になることを禁止している保険もあります。

保険会社に断られた場合、内縁の妻を受取人にする3つの方法

内縁の妻を生命保険の受取人に指定する方法については、これまでにも取り上げてきました。

内縁の夫の死亡に備えて今すぐ対策する必要があるのに、保険会社が受取人として認めてくれない場合、以下の3つの方法を使えば、内縁の妻であっても保険金を受け取ることができるのです。

事実婚の夫婦が知っておくべき3つの対策について、以下に詳しく解説します。

遺言で内縁の配偶者を受取人に追加する

遺言を作成することが、最初のステップとなります。そして、内縁の配偶者を保険金の受取人にすることを指定した自筆証書遺言を作成します。保険金の受取人は、あらかじめ二親等以内の親族である必要があります。

このような状況での遺言は法的効力を持たなければならないので、弁護士の前で、適切な書類と手続きを踏んで作成する必要があります。生命保険の受取人に内縁の妻を指定するには、相続に精通した弁護士や司法書士に依頼すれば、即座に対応してもらえるでしょう。

養子縁組をする

養子縁組をするのが次の対策です。養子縁組は、夫婦別姓による事実婚をすすめているカップルには適しません。しかし同性カップルや入籍はできないけれども法律上の関係を持っていたいと考えるカップルにはおすすめの方法です。

養子縁組で二親等以内の関係にある場合は、単純に受益者になることができ、他の財産の相続でも優先されることになります。

養子縁組をすれば、法的な配偶者でなくても、財産や生命保険を相続することになっても、実の親族から公然と非難されることはないでしょう。養子縁組をすることで、将来の争いをなくし、内縁の配偶者に確実に財産を渡すことができると思われます。

一時的に入籍する

もう一つの選択肢は、一時的に入籍し、合法的に婚姻することです。この方法の欠点は、面倒な入籍や離婚の手続きだけでなく、双方の戸籍に結婚や離婚に関する情報が残ってしまうことです。

生命保険に入るためだけに結婚し、離婚するというのは、あまり現実的な方法ではないかもしれません。

受取人が内縁の妻である場合、相続税は控除されないことに留意してください。

では次に、内縁の妻の税金面でのデメリットについて見ていきましょう。

内縁の妻の税金面でのデメリット

内縁の配偶者は相続税が高くなる?

婚姻届で証明される法律上の夫婦であれば、法定相続分の半分である1億6000万円まで相続税が免除されますが、内縁関係である場合はこの税制優遇措置は受けられません。

内縁の妻は相続人とはみなされないので、法定相続人が受けられる生命保険金の税額控除を受けることができず、相続税が高くなってしまうのです。

さらに、一親等以内の親族以外の人が財産を相続すると、相続税が20%上がる制度があり、内縁の妻もこれに含まれます。法定相続人には基礎控除が適用されますが、内縁の妻には適用されませんので、税負担は婚姻関係にある配偶者よりも格段に重いものとなるのです。

・婚姻関係にある配偶者の相続税→礎控除3,000万円+(600万円×法定相続人の数)、1億6千万円又は法定相続分の半分まで相続税を非課税、生命保険金(500万円×法定相続人の数)が非課税

・内縁の妻の相続税→法定相続人ではないものの相続・または遺贈となり相続税2割増し

保険料の控除も受けられない

ここまでは保険金の受け取りについてだけ説明しましたが、内縁の妻は彼女が生存していても税金の控除が受けられないため、既婚の配偶者に比べて不利になります。

保険金の受取人は、契約者本人またはその配偶者、3親等以内の親族、6親等以内の親族でなければならず、内縁の妻はこのいずれにも該当しません。

そのため、内縁の妻が得られる税制上のメリットは既婚の妻に比べて限定的であり、全体的な経済的負担は非常に大きくなる可能性があります。

まとめ

内縁の妻は生命保険の受取人になれる可能性があるが、注意も必要

要件を満たせば、内縁の妻を生命保険の受取人に指定することができる。

保険会社から申請を却下されても、内縁の妻を保険金受取人に指定する方法は3つある。

ただし、事実婚や内縁の配偶者は、相続税の控除対象にはなりません。

内縁の妻にとって、生命保険の受取人になるのはなかなか難易度が高いということです。