墓じまいとは

墓じまいとは、すでに建っているお墓を解体・撤去し、お墓のあった土地を更地にして管理者へ返却することをいいます。手元には、もともとお墓に入っていた先祖の遺骨が残ります。

このところ、いろいろな理由で、墓じまいする人が増加しています。主な理由は次の2つです。

①お墓を継ぐ人がいない

子どもがお墓を継ぐ意思がない、もしくは子どもがいないという場合です。年間管理費もかかりますので、それが払えないということもあるようです。子世代への負担を考えて、墓じまいをしたいと考える人もいるようです。

②遠方に住んでいる

遠くに引っ越してしまい、お墓参りが難しいため、お墓の引っ越しをしたいという場合です。墓じまいをした後に、新しくお墓を自宅の近くに作ります。簡単に言うと、お墓の引っ越しです。

墓地返却でお金は戻る?

墓地を返却しても、手元にお金が戻るわけではありません。お墓のある土地は、購入した土地ではないからです。

お墓を契約したときに支払う「永代使用料」によって、半永久的にその土地を墓地として使う権利が与えられます。

永代使用料を支払って契約した墓地は、お墓を建てる以外の目的では使用できません。墓じまいをする以上、返却することになります。

墓じまいの費用

墓じまいにかかる費用相場は30万円~300万円程度です。

単純に、今あるお墓を撤去するだけであれば10万円~30万円程度ですみますが、お墓から戻ってきた遺骨をそのまま放置するわけにはいかないですよね。

お墓から戻ってきた遺骨の扱いは次の3パターンに分かれます。

  • 新たに墓地を購入する
  • 散骨する
  • 永代供養墓に納骨する

改葬先を必ず選ぶ必要があるため、費用相場に幅が出てきます。

費用の内訳を見ていきましょう。

墓じまいにかかる費用の内訳

費用は大きく次の3つに分かれます。

  • 墓地を撤去する際にかかる費用
  • 行政手続きでかかる費用
  • 改葬先でかかる費用

それぞれ見ていきましょう。

①墓石を撤去する際にかかる費用

墓石の撤去費用

墓石の撤去費用は、墓石の大きさや撤去方法にもよりますが、1㎡あたり約10万円程度です。

墓石を撤去するとは、墓地から墓石を撤去して更地にした後、墓石を処分するまでのプロセスのことです。

閉眼供養の御布施代

お墓から遺骨を取り出す際には、僧侶に来てもらって、故人のお墓(墓石)に閉眼供養を行います。

この閉眼供養の際、読経をしていただいた僧侶に対して御布施代を3万円~5万円払うのが一般的です。

離檀料

現在の墓地が寺院の管理する霊園にある場合には、離壇料が必要になります。相場は3万円~20万円程度です。

寺院内の墓地を撤去するということは、檀家をやめるということですので、墓じまいをするなら、感謝の気持ちとして離壇料を支払いましょう。

離壇料の目安は法要1回分と同等です。ただし寺院によってはそれより高いこともあるし、離壇料を受け取らない場合もあります。

トラブルにならないよう、事前に相場を知っておく、石材店などに相談してみることをおすすめします。

行政手続きでかかる費用

行政での手続きも必要です。現在のお墓を管理する霊園から「埋葬許可証」を、改葬先から「受入証明書」、役所から「改葬許可証」を受け取っておきましょう。

改葬許可証

お墓の撤去は石材店に依頼することになりますが、改葬許可証を提出しなければなりません。

改葬許可証は遺骨のある墓地の市区町村役所で発行してもらえます。発行にかかる手数料は地域によって異なりますので、各役所確認してください。

500円程度であることが多いです。

改葬先での費用

新しい納骨先でかかる費用

墓じまいが終わったら、お墓から取り出した遺骨をどうするかを決めなければなりません。

遺骨は必ずしもお墓に納骨しなければならないという法律はありませんので、故人の遺言や親族での話し合いをもとに、生活スタイルに合わせて遺骨の取り扱いを決めましょう。

改葬先としては、一般墓、永代供養、散骨、樹木葬などが考えられます。

それぞれ納骨するための費用は異なりますので親族の間でもよく話し合って改葬先を決めるようにしましょう。

開眼供養の御布施代

新しい納骨先では開眼供養を行います。墓じまいの際に行った閉眼供養で、抜いた魂を新しいお墓に入れる儀式です。

開眼供養は閉眼供養と同様に、読経をしていただいた僧侶に対して御布施代を払うのが一般的です。

開眼供養の相場は3万円~10万円です。

墓じまいの費用が払えない場合

もし墓じまいの費用が捻出できそうにない場合は、親族や自治体に相談する、メモリアルローンを組む、安い改葬先を選ぶなどで対応します。

改葬先の選択肢はひとつではありませんので、ご自身や親族のお考え、故人の遺言や予算などにより最適な改葬方法を選択するようにしましょう。

墓じまいの流れ・進め方

墓じまいの流れを7ステップに分けて説明します。

1.親族間で同意を得る
2.管理者に墓じまいの連絡
3.遺骨の取り扱いを決める
4.墓じまいの依頼先を決める
5.墓地がある自治体で改葬許可証を発行してもらう
6.遺骨を取り出す
7.墓地を更地にして管理者に返還

1.親族間で同意を得る

墓じまいのファーストステップは、事前に関係する親族全員と話をして同意を得ることです。

ここをないがしろにすると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

2.管理者に墓じまいの連絡

墓じまいをすることが決まったら、お墓の管理者である霊園や寺院にその意思を伝え、「埋葬証明書」を発行してもらいましょう。

長年にわたって檀家としてお世話になってきた寺院が管理者の場合、トラブルにならないように伝え方に細心の注意をする必要があります。

墓じまいを理由を誠意をもって伝え、理解してもらいましょう。

3.遺骨の取り扱いを決める

墓じまい後の遺骨の受け入れ先は次のような場合が考えられます。

  • 別の一般墓
  • 樹木葬
  • 永代供養をしてくれる施設への改葬
  • 手元供養

改葬する場合は、墓じまいの手続きと併せて改葬先を探し、管理者に「受入証明書」を発行してもらう必要があります。

4.墓じまいの依頼先を決める

お墓を解体・撤去し、更地にする作業を個人で行うのはほぼ無理でしょう。

墓じまいは石材店や専門業者に依頼するのがおすすめです。

依頼先を決定する際には、ひとつの業者だけで決めず、複数の業者から見積もりを取り、予算とサービスの内容を比較・検討するといいでしょう。

霊園によっては、墓地内の通路の幅やセキュリティなどの関係で、依頼できる業者が決まっていることもありますので、事前にお墓の施設の管理者に確認をしておいたほうがいいでしょう。

5.墓地がある自治体で改葬許可証を発行してもらう

お墓の管理者から発行された「埋葬証明書」、改葬先から発行された「受入証明書」、現在のお墓がある市区町村に「改葬許可申請書」を提出し、「改葬許可証」を受け取ります。

改葬許可申請書は、自治体の窓口やウェブサイトなどからダウンロードできます。書き方がわからない場合は、自治体で確認しましょう。

6.遺骨を取り出す

改葬許可証を入手したら、お墓の中に入っている遺骨を取り出すことができます。遺骨を取り出すとき、「閉眼供養」を行うことがあります。これはお墓に宿る魂を僧侶に抜いてもらう儀式です。閉眼供養は、地域によって「魂抜き」、「お性根抜き」などと呼ばれる場合もあります。

7.墓地を更地にして管理者に返還

遺骨の取り出しが終わったら、お墓を解体し墓石を撤去します。土の上の墓石だけでなく、土の中の基礎工事部分まで撤去します。最後に整地をしたら、管理者に土地を返還し、墓じまいは完了です。

なお、改葬する場合は、改葬先と打ち合わせておいた日程で、お墓の移転工事を行います。新たにお墓を建てる場合は僧侶に依頼して、「開眼供養」(魂入れ)を行ってもらいます。

墓じまいで起こりやすいトラブル

墓石撤去料が高額になるケース

墓じまいでは墓石を撤去し、借りていた土地を更地にしてからお寺へ返却します。その際「墓石撤去料」も必要です。

墓石の撤去や土地の整地を依頼する石材店からの撤去料が高額すぎたというトラブルが考えられます。

対策

依頼する業者からは詳細な見積もりをとって確認するようにしましょう。

お墓の通路が狭くて作業がしにくい、共同の土地に複数のお墓があるなど手間がかかる場合はどうしても高額になってしまうことがあります。

複数の業者から相見積もりをとって比較しましょう。

お寺の檀家から高額な離檀料を請求された

お寺の檀家から抜ける際には、今までお葬式や法要などでお世話になったお礼として「離檀料」を払うのが一般的です。

墓じまいをしてお墓の敷地をお寺に返すことは、離檀といってお寺の檀家を抜けることになります。

そのため、感情的なトラブルとなり、思った以上の高額な離檀料を請求されてしまったというケースも実際にあるようです。

対策

お寺にとって、檀家から抜けられるということは、収入が突然なくなってしまうということになります。檀家からのお墓管理料やお布施で運営費の多くをまかなっているからです。

いきなり報告するのではなく、墓じまいの検討の段階から事前に相談しておくようにしましょう。

あらかじめ丁寧に事情を説明しておくことで理解してもらい、トラブルを防ぎましょう。

親族の理解を得ていない

お墓は他の親族の方にとっても、それぞれ思い入れがあるものです。

お墓の管理をしているのが自分だったとしても、独断で勝手に墓じまいを進めるのはトラブルの元です。

墓じまいにかかる費用の負担割合についてもトラブルになりがちです。

対策

親族には墓じまいを考えている段階から事前に相談し、墓じまいに対して理解をしてもらいましょう。

墓じまいに関わる費用についても誰がいくらずつ負担するのか、確認と了解を得てから進めるようにしましょう。

墓じまいするとき、遺骨はどうなる?

遺骨の取り扱いに注意

遺骨の取り扱いについては、法律でも決まりがあり、勝手に遺棄したり埋葬することはできません。

「刑法」第190条により、遺骨を形が残ったまま捨てることは法律で禁止されています。

死体や遺骨、遺髪または棺に納めてある物を、損壊や遺棄、領得した場合、3年以下の懲役刑が科せられます。

また、「墓地、埋葬に関する法律」第4条によって、墓地以外の区域に埋葬または焼骨の埋蔵を行ってはならないと定められており、違反者は、罰金や拘留、科料など処罰の対象となります。

遺骨を処分する場合には、細心の注意が必要です。

墓じまいして不幸にならない?

墓じまいなんてやったら、祖先に祟られるのではないか?

そんな不安を持つ人もいるかもしれません。

しかし仏教には亡くなった人が祟るという教えはありません。

仏教の考えでは、亡くなった人というのは現世での行いによって極楽浄土あるいは地獄へと送られます。

亡くなった方やその魂がその後現世に戻って来て誰かを祟る、というような教えはありません。

お葬式や法要は、亡くなった方が無事に極楽にたどり着けるようにと行うものです。

不安ならお寺に尋ねてみましょう。宗派によって多少違うものの、「きちんと供養して改葬してあげれば全く問題ない」という答えが返ってくるはずです。