特定空き家とは、法律によって次のように定められています。

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう

これは、2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」に基づいています。

特定空き家に指定されるとどうなる?

あなたやあなたの両親が所有する住宅が自治体から特定空き家に指定されると、修繕・解体等の勧告・命令に従わなければなりません。

勧告・命令に従わなければ、過料・修繕・解体費用が強制徴収されることになります。最大50万円以下の過料が科せられる可能性があります。

さらに、固定資産税の優遇措置が適用されなくなるため、固定資産税額はおよそ6倍となる可能性があります。

実際に2015年10月には神奈川県横須賀市で所有者の確認できない危険な空き家が撤去されました。

特定空き家の指定も増えてきています。

横須賀市の例で言うと、空家数29,000戸(2013年時点)に対し、「空家等対策特別措置法」の完全施行から約半年で、60戸ほどが特定空き家に指定されています。

空き家を相続してしまったら

「空家等対策特別措置法」によって、自治体は法廷相続人に、修繕・維持管理義務、撤去などの義務を課すことができるようになりました。

空き家対策法以前は、空き家の所有者を探しにくかったのですが、市町村が戸籍・住民票などから、法定相続人を探しだすことができるようになったためです。

特定空き家の所有者を特定するまでの流れ

①空き家の状況を市町村が把握する
②その空き家の法定相続人を戸籍などで調査
③全国の戸籍・住民票から現住所を特定
④法定相続人へ連絡・通知・勧告・命令・行政代執行

空き家を相続する可能性

総務省の家計調査によると、日本の50歳以上の家庭は80%以上が持ち家だそうです。

60~64歳だとさらに高くなり約87%。

この状況から考えて、この世代の親がいる方は、親が亡くなれば、その住宅を相続する可能性が高いということになります。

30代、40代の夫婦を考えてみましょう。

単純に考えて、相続の可能性がある家が、夫婦それぞれの実家、祖父祖母の実家、兄弟の家も可能性はあるので、少なくとも3戸以上の法定相続権を持っていることになります。

もちろん、すべてを相続するということはレアケースですが、このようにみてみると、誰でも空き家を相続する可能性があることになります。

他人事ではありません。

税金負担はどれくらい上がる?

特定空き家に指定されることで、固定資産税の負担が増えます。

土地や家屋の固定資産税は、課税標準×税率で決まります。

課税標準とは、簡単にいうと、土地の価値です。

市町村が決める土地の評価額に、税負担調整をした値が課税標準です。

住宅用地の場合、税金の軽減措置として、面積が200平方メートル(60.5坪)までだと土地評価額の6分の1、200平方メートルを超える面積は3分の1が一般的な住宅の課税標準となります。

しかし、特定空き家に指定されると、住宅用地とみなされなくなるため、軽減措置が適用されません。

具体例を挙げます。

評価額1800万円の土地の固定資産税を考えてみます。(面積が200平方メートル未満)

特定空き家指定前の住宅用地の固定資産税

課税標準=評価額1800万円×1/6=300万円
固定資産税=課税標準300万円×税率1.4%=42000円

特定空き家指定後の住宅用地の固定資産税

課税標準=評価額1800万円
固定資産税=課税標準1800万円×税率1.4%=252000円

固定資産税の負担が21万円増えることになります。

さらに、都市計画税という、固定資産税と同じように不動産に課される税金も上がります。

まとめ

このように、特定空き家に指定されると、大きく2つのデメリットがあります。

・税金負担が増える
・修繕、撤去の費用負担が発生する

空き家の相続は誰にでも起こる可能性のある問題です。

ご両親が元気なうちに対策を考えておくことが必要です。