内縁の妻の権利は何年たっても認められない

何年、何十年とパートナーとして付き合っていても、内縁の妻は法律上の配偶者として認められておらず、法定相続人とは言えません。そのため、被相続人の財産を相続することはできません。

内縁の妻の子どもは相続人になれる?

一般的に、内縁の妻の子どもは相続する権利がありません。ただし、内縁の夫が「認知」した場合に限り、子供は相続人となります。

内縁の妻が財産を相続する6つの方法と注意点

内縁の妻に財産を遺すには、いくつかの方法があります。

①生前贈与
②遺言で遺贈する
③生命保険の活用
④内縁関係も請求できる契約書を活用する
⑤遺族年金を利用する
⑥特別縁故者として相続する

①生前贈与

まず、被相続人が内縁の妻に何かを残したい場合、生前に財産の贈与を行うという方法があります。

贈与契約とは、当事者の一方が、相手方の承諾と引き換えに、自己の財産を無報酬で相手方に提供する意思を伝えるものです(民法549条)。

注意点

ただし、贈与契約の非課税限度額は年間110万円と定められています。

また、相続税の税率や基礎控除の大きさによって、より大きな税金が予想されるのが一般的です。

贈与契約書を作成する

贈与の際には、問題を回避するために贈与契約書を作成することをお勧めします。

②遺言で遺贈する

内縁の妻に財産を与えることを遺言で指定することで、財産を遺贈することができます。

さらに、遺贈は贈与と異なり、相続税の課税対象となる可能性があるため、譲渡する財産に大きな価値がある場合には、節税につながる可能性があります。

注意点

遺贈は、被相続人の子供が遺留分権利者となるため、被相続人の子供の遺留分を考慮した形で設定する必要があります。

③生命保険の活用

生命保険金の受取人を内縁の妻に指定することで、内縁の妻に一定の財産を残すことが可能です。

また、内縁の妻が受け取る保険金には相続税がかかります。

注意事項

相続人が受け取った生命保険金のうち、以下の非課税限度額までは相続税がかかりません。

非課税限度額=法定相続人の数×500万円

ただし、この非課税枠は相続人だけに適用され、内縁の親族には適用されません。

④内縁関係も請求できる契約書を活用する

内縁関係であっても、下記のように請求することが可能です。

賃貸借契約

まず、相続人がいない場合、内縁の妻は借地借家法を根拠に賃借人の権利を承継したと主張することができます(借地借家法第36条第1項)。

また、相続人がいる場合でも、判例は内縁の妻がその家屋に居住することができるとしています。

参考判例家屋賃借人の内縁の妻は、賃借人が死亡した場合には、相続人の賃借権を援用して賃貸人に対し当該家屋に居住する権利を主張することができるが、相続人とともに共同賃借人となるものではない。【最判昭42.2.21】

⑤遺族年金を利用する

遺族年金は、遺族が法律上の婚姻関係になく、内縁の親族であっても受け取ることができます。

⑥特別縁故者として相続する

被相続人を相続する人がいなければ、財産は原則として国庫に帰属することになります。

しかし、内縁の妻が家庭裁判所で「特別縁故者」の手続きを行えば、遺産の全部または一部を受け取ることができる場合があります。

内縁関係とは?

内縁」とは、以下のような意味です。

内縁関係」とは、婚姻届がないため正式な夫婦とは認められないものの、当事者の意識や生活習慣から、あたかも事実上の夫婦のように生活している男女の関係を指します。

具体的には、「内縁関係」が成立するための要件は以下の通りです。

  1. 男女に婚姻の意思があること。
  2. 婚姻の意思に基づく共同生活を営んでいること。

したがって、結婚の意思のない単なる恋愛関係や、婚約はしているが共同生活を欠いている関係(「婚約」が法的に有効かどうかは別として)、同棲しているが結婚の意思のない関係(愛人関係等)は「内縁」には該当しないのです。

「内縁の妻」と「愛人」の違い

いわゆる「愛人」は、親密な男女関係の延長線上にあるに過ぎず、法的には保護されません。亡くなった父親に愛人がいたとしても、食事やデートを重ねるだけの関係であれば、「愛人がいた」という程度にとどまります。

しかし、その愛人が長年被相続人と同居し、面倒を見ていた人であれば、前述のような内縁関係が認められる可能性があります。このあたりは、「内縁の妻」と「愛人」という呼び方ではなく、実態がどうであったかが重要です。